ラングドック〜Languedoc〜

ラングドック地方のワイン

カルカッソンヌ

ラングドック〜Languedoc〜

ラングドックはフランス南部、地中海沿岸に広がるワイン産地です。西側の山側のエリアにもぶどう畑は広がっていて中央高地=マッシフ・セントラルまで行くと南西地方です。

ローヌ川を境にして東側はプロヴァンスと隣接し、ラングドック北部はコート・デュ・ローヌと隣接しています。南部は一纏めで語られることが多いルーション地方です(ラングドック・ルーション地域圏)

南西地方は昔はオー・ラングドックと呼ばれていましたが、行政区分としてはラングドック・ルーション地域圏と統合してオクシタニー地域圏となっています(南西地方の全ての地域ではなく、ミディ・ピレネー地域圏の部分のみ。加えて南ローヌの一部も含む)

オクシタニーはフランス語の南部方言であるオック語を話す地域のことを指しますが、ラングドックの名称自体、オック語を話す土地の意味です。

ラングドック地方の代表的な街としては、モンペリエ(シュプアブロというぶどう栽培や醸造の研究が行われている農業工学の最高学府がある)、カルカッソンヌ(城塞都市として有名)、ナルボンヌ(後述するガリア・ナルボネンシスの中心都市)、ニーム(デニムの語源となった街)などがあります。

ガールの水道橋(ポン・デュ・ガール)やニームの円形闘技場、カルカッソンヌの城壁都市と言った古代ローマ時代の遺跡がたくさん残っている地域でもあります(カルカッソンヌは一部のみです。ほとんどは中世に拡張。後述するカタリ派とも関わりの深い)

安ワインの産地というイメージがある南仏ラングドックですがラングドックの中には様々なクリュがあり、ただ値段が安いだけのワイン産地ではありません。同じような品種を使いながらもクリュごとの味の違いも大きく、探求しがいがあります。

ラングドックは日照に恵まれ、トラモンタンという乾燥した強い風が吹くエリアで(雨は降っても冬に集中)、農薬の使用も自然と少なくなる、ぶどうを育てやすい土地です。

ラングドック全体としてはガッチリとした骨格のある力強いワインが多いです。特に山側はそうです。地中海側は少し穏やかな印象です。

安価なI.G.P.やヴァン・ド・フランスにも美味しいワインがある地域ではありますが、土地の個性が見える様々なアペラシオンのワインがオススメです(品質追求が始まったのは80年代からで、各産地がA.O.C.を取得していったのも80年代以降。それ以前は水代わりの大量生産ワインの産地だった)

アペラシオンのワインも含め、現在でもお手頃な価格帯のワインが多く、ルーションを含めると生産量としてはフランス全体の40%を占めます。

ラングドック地方の歴史

ラングドック地方はローマ帝国、フランク王国の支配を経て、イスラム王朝の支配下にあった地域です。その後フランク王国の支配下に戻りますが、キリスト教の異端とされるカタリ派の活動が活発な地域で、アルビジョワ十字軍に繋がっていきます。

ラングドック地方の料理、食材

ラングドック地方の料理は、ブランダード・ド・モリュ(モリュ=干し塩鱈とジャガイモのピュレ)、カスレ(カルカッソンヌやカステルノダリー、南西地方のトゥールーズ名物の、鴨や白インゲン豆などの煮込み)などが有名です。

地中海沿いのエリアでは魚もよく取れ、セートやブジークといった漁港が知られています。セートはマグロやムール貝、ブジークは牡蠣が有名です。

料理でセート風と言うとイカやムール貝に詰め物をしたトマト煮です。

ブーリッドという魚のスープも地中海沿いのエリアの名物です。

ラングドック地方のぶどう品種

ラングドックのぶどう品種は、黒ぶどうだとグルナッシュ、シラー(ラングドックの中でも冷涼な場所で)、カリニャン(ブートナックがいい)、サンソーが主に栽培されています。

白ぶどうは結構種類が多いですね。グルナッシュブランが中心で、ピクプール・ド・ピネではピクプール、ラ・クラープではブールブーランが主体となっています。

他にもクレーレットやヴェルメンティーノ、ミュスカなどが栽培されています。甘口のミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワはかなりはっきりした味わいで、他の甘口産地のワインにはない個性があります。

ラングドック地方のワイン生産地域〜山側のエリア〜

ラングドック風景 ミネルヴォワ

カバルデスやマルペールは、ボルドー、ベルジュラック、ガイヤックと続く線状にあり、ボルドー品種の使用が可能です(ボルドー品種と南仏品種をブレンドしなければならない)

シスト土壌で強さと伸びやかさを併せ持ったサンシニアン(特にベルルーやロックブリュン)、ミネルヴォワの中でも格を感じるミネルヴォワ・ラ・リヴィニエール、山側エリアの中にあって穏やかなコルビエール・ブートナック、ワイルドさのあるフォジェール、様々な土壌が入り組んだテラス・デュ・ラルザック、降水量が多く涼しいピク・サン・ルー、フランスでは珍しい玄武岩土壌のペズナス、シャルドネを使った白ワインが有名なリムーなどは押さえておきたいワイン産地です。

リムーは二次発酵させたスパークリングワインの発祥の地でもあります(ブランケットドリムー)

リムーでは赤ワインも作っていて、実はリムー・ルージュはかなりレベルが高いです。

山側ラングドックの各産地の詳しい紹介はこちらからどうぞ。

ラングドック地方のワイン生産地域〜海側のエリア〜

ラングドック風景セート

海側だと、品種名が付いたAOCのピクプール・ド・ピネ、ブールブーラン主体の白が美味しいラ・クラープ、穏やかな性格のグレ・ド・モンペリエ、海側と山側に飛び地で広がるフィトゥーなどがあります。

海側ラングドックの各産地の詳しい紹介はこちらからどうぞ。

ラングドック地方のグランクリュ

ラングドックでは近年、グランクリュを制定していますが(クリュ・デュ・ラングドック)、まだきちんと決まっていない印象を受けます。

  • ミネルヴォワ・ラ・リヴィニエール〜Minervois La Liviniere〜
  • コルビエール・ブートナック〜Corbières Boutenac〜
  • テラス・デュ・ラルザック〜Terrasses du Larzac〜
  • サンシニアン・ベルルー〜Saint Chinian Berlou〜
  • ラ・クラープ〜La Ciape〜
  • リムー〜Limoux〜
  • フォジェール〜Faugères〜

この辺りが選ばれているようです。アペラシオンごとの選定ですので、他の地域のグランクリュとは少し意味合いが違う感じがします(味わいの方向性的にもフランスのグランクリュ的ではない地域もある)

グランクリュ選定をするなら、アペラシオン内のより細かい良い区画を決めるなどの方向の方が良い気もしますが、安ワインのイメージが強いラングドックのワインの質の部分にフォーカスが当たるのは良いことだと思います。

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