ロワール〜Loire〜
ロワールは全長1000キロ以上にも及ぶフランス最大の河川、ロワール川流域に広がる大きなワイン産地です(15の県にまたがる)フランスの歴史的にも重要なエリアで、古城が多くあり、ヴェルサイユ宮殿が出来る以前は、文化的にも政治的にもフランスの中心と言えるような地域でした。
ロワール地方の歴史
ロワール地方の歴史はフランスの歴史と言っても良いくらい重要です。アンジュー帝国や、フランス王や貴族が暮らしていた古城、ジャンヌ・ダルクが表舞台に姿を表した百年戦争のオルレアン包囲戦も、名称通りロワールのオルレアンが舞台です。
ロワール地方の料理、食材
ナントの周辺は川カマス(ブロシェ)が名物で、ブロシェ・オ・ブール・ナンテが知られています。ブール・ナンテはブールブランソースにクリームを加えたものです。クリームを加えないブールブランソースも定番です(というか古典ですね)
川カマス以外にもロワール川で獲れる川魚料理が良く食べられます。
シャンボール城の名前から取った豪華な古典料理もあります。カルブ・ア・ラ・シャンボール(シャンボール風の鯉)です。これは、鯉の中に白身魚のペーストなどを詰めて赤ワインでブレゼしたものです。
鰻も赤ワイン煮込みにします。マトロート・ダンギーユです。
ブールジュを中心とするベリー地方は、フランス革命以前の州の一つでもありますが、ランティーユ(レンズ豆)が特産品です。ポテ・ド・ランティーユ・デュ・ベリーというレンズ豆やソーセージなどの煮込み料理が知られています。
ビストロの定番、リエットはフランス全土で食べられていますが、トゥールのリエット・ド・トゥールは特に美味しいと評判です。リエットは色々な肉で造るペーストですが、トゥールのリエットは豚肉が基本です(リエットはそもそも豚肉が基本だとは思いますが)
トゥールの他、アンジューのリエットも有名です。ペーストにしていない豚肉の塊のままの料理のリヨンもロワール(トゥール)を代表する料理です。
ロワールはアスペルジュ(アスパラガス)の生産も多いです。ホワイトアスパラの季節には日本でもロワール産のホワイトアスパラをよく見かけますね。
アスペルジュ・ソース・ムスリーヌは定番の食べ方です(ソース・ムースリーヌはソース・オランデーズにクリームなどを加えたソースです)ホワイトアスパラだったらミモザ仕立てとかも定番ですね。
お菓子だとクレメ・ダンジュ(クレーム・ダンジュ)や、タルト・タタン(リンゴのタルト)が知られていますね。タルト・タタンも今や日本ではほぼ見かけないお菓子だと思いますが、たまに食べるととても美味しいです。
チーズはシェーブルチーズが基本です。ヴァランセや、クロタン・ド・シャヴィニョールなどが知られています。
歴代のフランス王や貴族が狩猟を楽しんでいた地域でもありますので、ジビエも豊富です。ソローニュの森がありますね。
ロワール地方のぶどう品種
ロワール地方で栽培されているぶどう品種はエリアとアペラシオンごとに細かく決まっています。白ぶどうはソーヴィニヨンブランやシュナンブランが多く、地域によってはミュスカデやロモランタンなどもあります。黒ぶどうはカベルネフランやガメイ、そしてピノノワールが植えられています。
ロワール地方のワイン生産地域
ロワールのワイン産地は西から(ロワール川下流から上流にかけて)、ペイナンテ地区、アンジュ&ソーミュール地区、トゥーレーヌ地区、サントル&ニヴェルネ地区という4つのエリアに分かれています。
ペイ・ナンテ〜Pays Nantais〜
ペイナンテ地区はナント市周辺に広がる大きな産地で、非常に飲みやすく口当たりのいいミュスカデの産地です。この辺りは土壌も入り組んでいて、なかなか面白い場所です。スッキリしていながら、石灰っぽい硬さや締めつけがないのがいいところです。
ミュスカデは澱ともに熟成させるシュール・リー(発酵後にオリ引きせずに数ヶ月寝かせる製法)とセットで語られますが、シュール・リーは他の産地でも行われています。
アンジュ&ソーミュール〜Anjou & Saumur〜
アンジュ地区はアンジェ市周辺のワイン産地で(アンジュとアンジェ分かりづらいですね)、少し甘いロゼのロゼ・ダンジュが有名ですが、一番大事なのはサヴニエールです。
サヴニエールは、ロワール全体を通しても群を抜いてクオリティの高いワインができる場所です。特に有名なクーレ・ド・セランは別格です(通常のサヴニエールはアンジュの延長線上の味わいだけど、クーレ・ド・セランは方向性が違う)
ソーミュールのワインも日常的な気軽さがあって、赤、白共にビストロ料理に合わせやすい使い勝手の良いワインです。
トゥーレーヌ〜Touraine〜
トゥーレーヌ 地区はトゥール市を中心としたエリアで、古城が多く、フランスの歴史的にも大切なエリアです。シノンやブルグイユ、ヴーヴレなどのワインが有名ですが、まずは基本のアペラシオン、トゥーレーヌを押さえておきたいところです。特に地区名付きのトゥーレーヌ(デノミナシオン)は特徴がはっきりしていて覚えておいて損はないです(ただ日本にあまりない)
- トゥーレーヌ ・シュノンソー
- トゥーレーヌ・ アゼ・ル・リドー
- トゥーレーヌ・ノーブル・ジュエ
- トゥーレーヌ・アンボワーズ
- トゥーレーヌ・メスラン
- トゥーレーヌ・オワリー
赤ワインだと最も品のあるカベルネフランを生み出すシノン(下手なものはいまだに青臭い)があり、近くにはブルグイユやサン・ニコラ・ド・ブルグイユが同じくカベルネフランを使ったワインを作っています。シノンに比べると少し素朴な印象です。
サントル&ニヴェルネ〜Centre Nivernais〜
サントル&ニヴェルネ地区はサンセールとプイィ・フュメが有名ですね。特にサンセールは、ロワールと言えばまずサンセールと言われるくらい人気があるワインです。サンセールは実際素晴らしいワインがたくさんありますが、基本としてはまずはトゥーレーヌやアンジュから始めて、最後にサントル&ニヴェルネという流れが良い気がします。
サンセールやプイィフュメと一緒に、隣接するコトー・デュ・ジェノワも覚えておきたい産地です。サンセールをカジュアルにしたような使いやすさがあります。
サンセールも色々な土壌がありますが、キンメリジャン土壌があり、近郊のシャブリや、シャンパーニュ南端のエリアであるコート・デ・バールと共通します。別の産地にはなりますが、共通の軸で考えるとわかりやすいです。