プロヴァンス〜Provence〜
プロヴァンスは、フランスの南東部、ローヌ川の左岸からニース周辺まで広がる地中海沿岸の地域です。
ニースやカンヌといったコート・ダジュールのリゾート地で知られています。
ニースは地方の東端付近の街で、モナコ公国やイタリアのリグーリア州には日帰りで行くことも出来ます。
プロヴァンスは映画などの影響もあって、南仏の温かなイメージを持っている方も多いですね。
実際、地中海性気候で、夏は暑く乾燥し、雨が降るのは秋の終わり頃から冬にかけてです。
コート・デュ・ローヌに吹くミストラルは東に向きを変えてサント・ヴィクトワール山の麓を吹き抜けていくため、暑さが軽減されます。
実際のワインは南仏の中では特にクールな味ですし、中心都市のマルセイユは、南仏的ではない雰囲気を感じます(少し怖い感じもあります。トルコやマグリブ諸国の移民が多いことが街の雰囲気を他の都市と違うものにしているのでしょう)
南仏プロヴァンスの12か月の舞台にもなっているメネルブ辺りは、プロヴァンスの外れ、南ローヌの方ですしね。
プロヴァンスのワインは大部分がロゼワインで、プロヴァンスと言えばロゼというイメージを持っている方も多いと思います。プロヴァンスのロゼワインの多くは、ふんわりした可愛い雰囲気のものではなく、石灰の強いカチッとしたタイプです。ダイレクトプレスでさらっとした感じに造っています。
フランス全体のロゼの40%程度をプロヴァンス地方のロゼが占めています。
土壌は石灰質、粘土石灰質が多いですが、東部にはシストがあり、違った個性のワインを生み出しています。
プロヴァンス地方の歴史
プロヴァンスはフランスのワイン産地の中でも最もぶどう栽培の歴史が古い地域です。古代ギリシャやローマ帝国との関わりの中で発展してきました。フランスワインの最初の出発点としてとても重要な地域だと思います。
プロヴァンス地方の料理、食材
プロヴァンス地方の料理は良く知られたものがいくつもあります。サラダ・ニソワーズ、ブイヤベース、ラタトゥイユ、ジゴ・ダニョー・アン・クルートとビストロの定番料理が揃っていますね。
カマルグの雄牛を使った煮込み、ガルディアン・ド・トローも有名です。カマルグはフランスでは珍しい稲作地帯でガルディアン・ド・トローにもカマルグの米が添えられます。場所としてはアルルの南部に位置します(行政区分上はアルルに含まれる)
カマルグは湿地帯を走る白い馬の方が知名度が高いかもしれませんね。
フランスの他の産地同様ジビエもよく食べられ、ウサギ、キジ、ツグミなどを見かけます。
ハーブも有名で、アニス、バジル、フェンネル、セージ、タイムなど様々なハーブが自生しています(まだまだたくさんある)多くのハーブは香り高く、料理に加えるとスッと上に抜けていく軽やかさを生みますが、プロヴァンスのワインからも同様のニュアンスを感じます。様々なハーブをブレンドしたエルブ・ド・プロヴァンスも知られていますね。
ハーブを漬け込んだりして造られるリキュールも多く、プロヴァンスのアニス酒パスティスは有名です。
カヴァイヨンのメロンも知られていますね。メロンと生ハムを合わせて食べる古典的な料理は、日本のメロンだと今ひとつですが、カヴァイヨンのメロンだと絶品です。
チーズはバノンがあります。山羊のチーズで栗の葉に包まれているのが特徴です。
乳牛が少なく、チーズはバノンのような山羊のチーズが一般的で、軽く温めたシェーブルチーズを添えたサラダのサラダ・シェーブル・ショーは定番の料理です(パリとかでもよく見かけますが)
料理全般で言うと、ニンニクやトマトを多用する傾向にあります。オリーヴも特産品ですし、オリーヴオイルが基本です。
プロヴァンス地方のぶどう品種
プロヴァンスのぶどう品種は、他の南仏エリアと同様、黒ぶどうだとグルナッシュ、シラー、カリニャン、ムールヴェードルなどですが、意外とカベルネ・ソーヴィニヨンなども多く見かけます。これらの品種を使用してロゼワインや赤ワインが造られます。
白ぶどうもヴェルメンティーノやグルナッシュ・ブラン、クレーレットやブールブーランなどの南仏品種が栽培されています。アペラシオンによって主要品種は様々ですが、ヴェルメンティーノ比率が高いように思います。
また後述するカシーのようにソーヴィニヨン・ブランと言った北の品種が認められているアペラシオンもありますし、パレットのような上記以外の地場品種を多用するアペラシオンもあります。
プロヴァンス地方のワイン生産地域
ロゼが人気のあるプロヴァンスですが、最もよく見かけるのは広いエリアを包括するコート・ド・プロヴァンスのロゼです。そういったロゼワインも気軽で楽しいですが、他にも様々なアペラシオンがあり、ロゼワインだけではなく、魅力ある白ワインや赤ワインも造られています。
先に紹介したプロヴァンスの大都市マルセイユは、魚介の煮込みであるブイヤベースが有名です。そのブイヤベースに合わせる定番と言われるワインがカシー(カシス)です。
カシーはマルセイユから電車で30分程度の港町で、日本の小さな漁村にも通じる素朴さがあります。カランクという綺麗な入江が有名な街でもあります。
カシーは生産者が数人しかいない小さなアペラシオンで、全造り手がナチュラルな栽培をしています。カシーは白ワインとロゼワインが有名で、滑らかな口当たりが特徴ですが、赤ワインも侮れない品質です。
フィロキセラ前とは品種も違い、別のワインとして生まれ変わっていますが、成功していると思います。
カシーの詳しい紹介はこちらからどうぞ。
プロヴァンスで最も偉大なクリュと言えばパレットです。混植混醸だからこその複雑さが魅力で、高価ですが、他に代え難いワインです。パレットも白ワインとロゼワインが人気ですが、赤も良いです。
パレットの詳しい紹介はこちらからどうぞ。
ただパレットもカシーも日本にはほとんど輸入されていなく、同じ生産者のものしか見かけないのが現状です(上記で紹介した生産者です。カシーならマグドレーヌ、パレットならシモーヌ)
マイナー度合いでいけば、さらに見かけないニース近郊のベレもあります。ベレは使用されている品種も面白いです。
赤ワインで有名なのはバンドールでしょうか。ムールヴェードルが最も生きる場所で、地質年代の古い土壌から生まれる陰りがあります。ブレタノミセスに汚染された濁ったワインが多い産地ですが、重厚でスパイシーさがあります。少しであれば味わいを複雑にするとも言われるブレット(ブレタノミセス)ですが、近年は汚染のないクリーンなバンドールも増えているようです。バンドールはロゼもおススメです。
バンドールの詳しい紹介はこちらからどうぞ。
プロヴァンスは地中海に面した印象を持ちますが、多くの生産地は内陸の山にあります。海沿いはカシーやバンドール(山の畑も多い)、そしてコート・ド・プロヴァンス・ラ・ロンドでしょうか。ラ・ロンドは他の地域のような石灰岩が少なくシスト土壌なので、伸びやかで硬くなりすぎないのが魅力です。
コート・ド・プロヴァンスの中でも内陸にあるコート・ド・プロヴァンス・サン・ヴィクトワールや、コトー・ヴァロワといった山側のワインにも良いものがたくさんあります。
コート・ド・プロヴァンスの詳しい紹介はこちらからどうぞ。
上記で紹介した以外のプロヴァンスのワイン生産地域の詳しい紹介はこちらからどうぞ。