ボルドー〜Bordeaux〜

ボルドー地方のワインの特徴

ボルドーの街

ボルドー〜Bordeaux〜

ブルゴーニュと並んでフランスの二大産地として有名なボルドー。ブルゴーニュが単一品種で造られる場合がほとんどなのに対して、ボルドーは数種類の品種をアッサンブラージュして造られます(単一のものもありますが)

ボルドーは、フランスの南西部に位置します。ボルドーの市街地はガロンヌ川に面していますが、ガロンヌ側の湾曲に合わせて、三日月の形をしていることから、月の港、とも呼ばれます。

ボルドー地方の歴史

ボルドー地方はイングランドとの深い繋がりの中で発展したワイン産地です。元々はぶどう栽培が気候の上でも土壌的にも難しい地域でしたが、数々の困難を乗り越えて現在の銘醸地、ボルドーが誕生しました。

ボルドー地方の料理と食材

カヌレ・ド・ボルドーは、ボルドーで最も知名度の高いお菓子ですね。蜜蝋を塗った専用の小さなカヌレ型でしっかりと焼き上げたお菓子です。アヌンシアード修道院で造られたというのが定説です。

ボルドーワインを清澄(コラージュ)するために、大量の卵白を使っていたのですが、余った卵黄の使い道として生まれたのがカヌレとされています。

カヌレは日本でもちょこちょこ見かけますが、キチンと作られていないものも多く、外側はカリッと、中はしっとりした食感は意外と作るのが難しいです(材料はシンプル)

ボルドー市内にチェーン店のように何店舗かあるバイヤードランはカヌレの定番ですが、流石に美味しいです。

ボルドーのお菓子で言うとサンテミリオンのマカロンであるマカロン・ド・サンテミリオンもよく知られています。

サンテミリオンのマカロンはよく見るマカロンとは違って、クリームやジャムなどは挟みません。生地自体全然違って素朴ですがとても美味しいです(アーモンドや卵白を使っているのは共通)

マカロンは他にも、ロレーヌのナンシーで作られるマカロン・ド・ナンシーや、ピカルディー地方のアミアンで作られるマカロン・ダミアンがありますが、それらもクリームなどは挟まないので、よく見かけるマカロン・パリジャンに方が特殊だとも言えます。

ボルドーの料理と言うと、必ず名前が上がるのはヤツメウナギです。ヤツメウナギの赤ワイン煮込みのランプロワ・ア・ラ・ボルドレーズが一般的な食べ方です。

ヤツメウナギはウナギという名前が付いていますが、鰻ではなく別の種で、味わいも鰻とは似ても似つかない印象です(ヤツメウナギは円口類というかなり珍しい生物)

ヤツメウナギは高級魚で非常に美味しいとのことですが、僕が一度ボルドーで食べたものは臭みがあり刺激臭があり、美味とは言い難いものでした。ですが食べた感じ、缶詰の味だったので、缶詰ではないものをキチンと調理したなら美味しいのかもしれません(缶詰でももっと美味しくできそうですが)

ボルドーは仔羊も有名です。乳飲み仔羊のアニョー・ド・レですが、特にポイヤックのアニョー・ド・レが知られています。

ボルドーは海に近い産地ですが、大西洋岸には牡蠣(ユイトル)で有名なアルカションがあります。ボルドーの在住の人たちのバカンス地でもありますが、牡蠣だけではなく他の魚介類も豊富に取れます。

牛肉もアントルコート・ボルドレーズという牛リブロースを焼き上げた料理が知られています。牛の種類としてはボルドー近郊のバザス村のバザス種や、少し範囲を広げると、リムーザン牛、ブロンド・アキテーヌ牛といったブランド牛もあります。

ボルドレーズは、ボルドーの赤ワインを使用したソースを指すことが多いですが、一番よく耳にするボルドレーズは、茸のボルドレーズかもしれません。

キノコのボルドレーズは、赤ワインを加えるルセットも見たことありますが、基本はエシャロットなどと強い火でさっと火を通したキノコです。セップ茸(セープ茸)のボルドレーズが有名です。

ボルドー地方のぶどう品種

ボルドー畑

ボルドーを代表する赤ワイン用の品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロの3品種です。次の項で説明しますが、ボルドーは大きな川を挟んで、左岸と右岸に分けることはできますが、ぶどう品種自体は同じですが、左岸と右岸で使用する品種の割合が異なります。メドックに代表される左岸はカベルネ・ソーヴィニヨン主体にメルロ、カベルネ・フランやアクセントにプティ・ヴェルドやマルベック、カルメネールなどをアッサンブラージュします(フィロキセラ前はマルベック、カルメネール、カベルネフランの産地。カベルネ・ソーヴィニヨンは新しい品種)

右岸はメルロ主体にカベルネ・フランをアッサンブラージュすることが多く、他の補助品種も左岸と同様ですが、カベルネ・ソーヴィニヨンの割合は少ないです。

白ワインはソーヴィニヨン・ブランとセミヨンが主体で、ミュスカデルなどとアッサンブラージュします。貴腐ワインの産地、ソーテルヌなどはセミヨンが主体です。

ボルドー地方のワイン生産地域

ボルドーは大きく分けて左岸と呼ばれる地域と、右岸と呼ばれる地域に分かれます。ボルドーには3つの川が流れていて、中央山脈から流れてくるのがドルドーニュ川、ピレネー山脈から流れるのがガロンヌ川で、ドルドーニュ川とガロンヌ川は合流し、ジロンド川となって大西洋に流れていきます。

ガロンヌ川からジロンド川にかけて流れる川の西側が左岸と呼ばれる地域で、ドルドーニュ川からジロンド川にかけての東側が右岸と呼ばれる地域です。左岸にはメドックやグラーヴ、ソーテルヌ、右岸にはサンテミリオン、ポムロール、フロンサックといった代表的な地区があります。

他にもコート・ド・ボルドー(いくつかの場所に点在)、アントル・ドゥー・メール(ガロンヌ川とドルドーニュ川の間)といったエリアがあります。

本来はもっと細かく分類出来ますが、細かくなりすぎると分かり辛くなってしまいますので、小さな産地は大きな産地の項目に含めています。

ボルドー全体としては、降水量が多く、湿度が高い地域です。灰色カビ病のリスクがありますが、上質な貴腐ぶどうが出来る要因でもあります。

ボルドーは北緯45度あたりに位置していますが、大西洋を流れるガルフ湾流(暖流)の影響で、温暖な気候となっています(海洋性気候)

ボルドーの南側にはランドの森(松林)が広がり、海風からぶどう畑を守る役割も果たしています。

ボルドー地方の格付け

ボルドーシュヴァルブランサンテミリオン

ボルドーのメジャー産地はワインの格付けが行われていて、格付けされたワインが圧倒的に有名です。

格付け以外のワインの方が随分と多いのですが、格付けワインのみでボルドーの勉強を終えてしまっている人も多いのではないでしょうか?

格付けでもっとも有名なのが1855年のメドックの格付けです。1級から5級までの格付けで、現在までほぼ変更はありません(発表された直後にシャトー・カントメルルが5級に加わったのと、シャトー・ムートン・ロートシルトが1973年に2級から1級に格上げされている)

格付けが変わらないことから、現在のクオリティと一致しないと言われることもありますが、それは値段に反映されています。

クオリティの差はあれど、最低限の品質は保っていて、格付けシャトーであれば安心して飲めるという考えも理解できます。

加えて格付けが人気を呼び、ワインが売れる、お金を設備投資に回せるなどの好循環からか、2級以上のシャトーのワインの完成度は実際、非常に高いです。

メドックの1級シャトー

ボルドーラフィットロートシルトポイヤック

メドック格付けの1級シャトーは五大シャトーと言われ、ワインが好きではない人でも名前を聞いたことがあるのでは?と言うくらい有名ですね。

  • シャトー・ラフィット・ロートシルト〜Château Lafite-RothsChâteauld〜(ポイヤック)
  • シャトー・ムートン・ロートシルト〜Château Mouton Rothschild〜(ポイヤック)
  • シャトー・ラトゥール〜Château Latour〜(ポイヤック)
  • シャトー・マルゴー〜Château Margaux〜(マルゴー)
  • シャトー・オー・ブリオン〜Château Haut Brion〜(オー・ブリオンだけメドックではなくグラーヴのペサック・レオニャンのワインだが例外的に選ばれている)

上記の5つが1級格付けのシャトーです。()内はシャトーがある村名です。

ボルドーのその他の地域の格付け

グラーヴ自体にも格付けがありますし、サンテミリオンの格付けも有名ですね。サンテミリオンの格付けの頂点は、プルミエ・グランクリュ・クラッセAのシャトー・オーゾンヌとシャトー・シュヴァル・ブランの2つでしたが、2012年の格付け見直しでシャトー・アンジュリュスとシャトー・パヴィが加わって4つになっています。ですがクオリティとしてはオーゾンヌとシュヴァル・ブランには及ばないと思います(特にアンジュリュスは差がある)

ポムロールには格付けこそありませんが、シャトー・ペトリュスやシャトー・ル・パンを筆頭に、格付けと言ってしまっても問題ないような慣習上の格付けと呼べるものがあります。

ボルドーの格付け以外のワイン

ボルドーは上記で紹介したような格付けシャトーを中心に考えることが多く、格付けワインを主体にして考えると、濃厚で力強いワイン産地の印象を持ちます。

しかし格付けワインはボルドーの一側面であり、他の多くのワインは以外なほど優しいです。テロワール的には穏やかなワインを生む産地と言えます(お金がある有名シャトーは最新設備を使い、凝縮感がしっかりと出る醸造法でワインを造っている)

それは特にメドックや、サンテミリオン、ポムロールなどの有名産地以外のワインに顕著です。それを理解していないと、実際は多く存在する優しくしっとりしたボルドーワインを飲んだ時に、ボルドーぽくないという間違った反応をしてしまいます。

以前のボルドーは今よりさらに色の淡いクラレットと呼ばれるワインでした(濃いロゼといった感じ)今でも当時のクラレットを思わせるクレーレという濃いロゼを造る造り手はいます(アペラシオンとしては広域の安価なタイプ)クレーレを飲めばボルドーワインの理解がより深まると思います。



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