ソーテルヌ、バルサック〜Sauternes-Barsac〜
ソーテルヌは、世界中でもっとも有名な極甘口ワインの生産地です。
ソーテルヌはボルドー左岸のグラーヴの中にあります。A.O.C.ソーテルヌとシロン川を挟んで北西側にはバルサック村があり、A.O.C.バルサックも甘口ワインを生み出す産地です。
バルサックとソーテルヌは違った個性がありますが、バルサックで造られたワインはソーテルヌを名乗ることもできるので、注意が必要です(バルサックの造り手はバルサックを名乗る場合が多いように思いますが)
バルサックは平坦な地形で粘土石灰質土壌です。少し冷たい雰囲気があり柑橘っぽいです。甘みの中に酸も感じます。カッチリしています。
ソーテルヌは砂利の丘があり、比べると南国フルーツ的なニュアンスを感じます。酸はかなり少なく力強さがあります。
村としてはバルサックの他にボンム村〜Bommes〜、ファルグ村〜Fargues〜、プレニャック村〜Preignac〜のワインもソーテルヌを名乗ることができます。例えばポンム村は柔らかい印象です。
ソーテルヌの貴腐ワイン
ソーテルヌとバルサックはシロン川がガロンヌ川に合流する地点にありますが、森の中を抜けて水温が低いシロン川とガロンヌ川の温度差で霧が発生し、その影響で畑にはボトリティス・シネリア菌(貴腐菌)が発生します。
ボトリティス・シネレアの影響でぶどうは萎れ、水分が蒸発することで、極甘口のワイン(貴腐ワイン)が出来上がります。
ボトリティス・シネレアは、タイミングが違えば、灰色カビ病の原因にもなる菌で、他の地域でも年によって貴腐ワインが出来ることがありますが(または辛口ワインに貴腐ぶどうも入る)、毎年のようにうまく貴腐ワインが造れる地域は世界中をみても、いくつもありません。
ソーテルヌにおいても必ず貴腐ワインが造れるわけではなく、もっとも有名なシャトー・ディケムでも、1952年、1972年、1992年、2012年は生産していません。
ソーテルヌとバルサックの格付け
ソーテルヌとバルサックはメドックと同じく1855年に甘口白ワインのみの格付けが行われています。特別第一級〜Premier Grand Cru〜、第一級〜Premier Cru〜、第二級〜Deuxiemes Cru〜の3つに分かれていて、特別第一級はシャトー・ディケムのみです。
特別第一級〜Premier Grand Cru〜(1)
- シャトー・ディケム〜Château d’Yquem〜ソーテルヌ村
シャトー・ディケムは単にイケムと呼ぶ方が多いですね。もちろんソーテルヌ村です。極上の甘口ワインが揃うソーテルヌエリアに置いても別格です。ソーテルヌのエリアは平地が多いですが、シャトー・ディケムの畑は小さな丘の上です。丘の上にまで粘土質があるのが特徴で、適度な粘りを生みます。粘土の他に石灰や砂利もあります。引っ掛かりのなさ、流れの綺麗さが段違いです。土台が安定しつつゆったりと上昇します。柔らかい味ではないです。ゆったりしつつ硬めの質感です。品位の高さは全ボルドーワインの中でも一番かもしれません。現在はビオディナミも取り入れています。
シャトー・ディケムは甘口ワインの他に辛口白ワインのイグレックも1959年から造っています。元々は貴腐ではないぶどうが多く出来た年に造られていましたが、2004年からは毎年生産されています。以前はイケム用のぶどうを収穫後に糖度が低いものを使って造っていましたが、現在はイケム収穫前にイグレック用のぶどうを選別して収穫しています。貴腐ぶどうも少し入った辛口ワインで、香りや質感が普通の白ワインとは違う印象です。辛口とはいえ少し甘めです。
第一級〜Premier Cru〜(11)
- シャトー・ラ・トゥール・ブランシュ〜Château La Tour Blanche〜ボンム村
- シャトー・ラフォリ・ペラゲ〜Château Lafaurie Peyraguey〜ボンム村
- シャトー・クロ・オー・ペラゲ〜Château Clos Haut Peyraguey〜ボンム村
- シャトー・ド・レイヌ・ヴィニョ〜Châteaude Rayne Vigneau〜ボンム村
- シャトー・ラボー・プロミ〜Château Rabaud Promis〜ボンム村
- シャトー・シガラ・ラボー〜Château Sigalas Rabaud〜ボンム村
- シャトー・クーテ〜Château Coutet〜バルサック村
- シャトー・クリマン〜Château Climens〜バルサック村
- シャトー・スデュィロー〜Château Suduiraut〜プレニャック村
- シャトー・ギロー〜Château Guiraud〜ソーテルヌ村
- シャトー・リューセック〜Château Rieussec〜ファルグ村
第一級〜Premier Cru〜にはよく名前を聞くトップクラスのシャトーが揃っています。シャトー・クロ・オー・ペラゲはもともと同じく第一級のシャトー・ラフォリー・ペラゲの一部でした。標高の高い区画です。セミヨンの比率がかなり多く9割を超えています。ポンム村です。
粘土もある土壌でセミヨン主体なので重くなりそうですが、標高が高く、砂や砂利で覆われた畑ということもあって軽やかです。シャトー・クロ・オー・ペラゲは質が高いのに安いのもいいです。
ラフォリーペラゲもとてもいいです。
シャトー・クーテはシャトー・クリマンと並んでバルサックを代表するシャトーです。ボルドーのシャトーの中でも歴史ある存在。バルサックらしいカチッとした冷涼感のあるワインです。
シャトー・ギローはボルドーの中でも早くからオーガニックの取り組みを始めているシャトーです。ソーテルヌ村です。現在はビオディナミを行っています。ソーヴィニヨンブラン比率がソーテルヌの中では高めで、35%程度を占めています。引っかかる部分がなく質感が滑らか。肌触りの良いワインです。
シャトー・ギローは、セミヨンとソーヴィニヨンブランを半量づつで仕込む辛口の白ワインも造っていますが、それも非常に良いです。しっとりした質感で使い勝手が良いです。普段使い出来る価格も良い。この記事で紹介している高級甘口ワインより、使える場面はル・ジェ・ド・シャトー・ギローの方が多いかもしれません。
イケムにしろギローにしろ良いナチュラルワインですが、ビオディナミぽさは少ない印象です。
第二級〜Deuxiemes Cru〜(15)
- シャトー・ドワジ・デュブロカ〜Château Doisy Dubroca〜バルサック村
- シャトー・ブルーステ〜Château Broustet〜バルサック村
- シャトー・ネラック〜Château Nairac〜バルサック村
- シャトー・ド・ミラ〜Château de Myrat〜バルサック村(A.O.C.はソーテルヌ)
- シャトー・ドワジ・デーヌ〜Château Doisy Daene〜バルサック村(A.O.C.はソーテルヌ)
- シャトー・ドワジ・ヴェドリーヌ〜Château Doisy Vedrines〜バルサック村(A.O.C.はソーテルヌ)
- シャトー・カイユ〜Château Caillou〜バルサック村(A.O.C.はソーテルヌ)
- シャトー・スオー〜Château Suau〜バルサック村(A.O.C.はソーテルヌ)
- シャトー・ド・マル〜Château de Malle〜プレニャック村
- シャトー・ダルシュ〜Château d’Arche〜プレニャック村
- シャトー・フィロー〜ChâteauFilhot〜プレニャック村
- シャトー・ラモット〜Château Lamothe〜プレニャック村
- シャトー・ラモット・ギニャール〜Château Lamothe Guignard〜プレニャック村
- シャトー・ロメール・デュ・アヨ〜Château Romer du Hayot〜ファルグ村
- シャトー・ロメー〜Château Romer〜ファルグ村
第二級〜Deuxiemes Cru〜になると格付けに選ばれているとは言え、知名度はそれほど高くない印象です。ですが格付けに選ばれているだけあり、どれを飲んでもある程度高いレベルを保っています。
その中でもシャトー・ラモット・ギニャールはコスト・パフォーマンスで考えると非常におすすめです。紹介しているシャトー・ラモット・ギニャールは2012年のハーフサイズです。
周辺の甘口アペラシオン
バルサックの隣にはセロン〜Cerons〜があります。ほぼと言っていいくらい見かけないアペラシオンですが、A.O.C.セロンのエリアで造られたワインは辛口であればグラーヴのアペラシオンとなります(半甘口のグラーヴ・シュペリュールも可能)
ソーテルヌやバルサックのガロンヌ川を挟んだ対岸にはサント・クロワ・デュ・モン〜Sainte-Croix-du-Montやルーピアック〜Loupiac〜があります。サント・クロワ・デュ・モンやルーピアックは粘土石灰質土壌です。
ボルドーのワイン産地⑥、コート・ド・ボルドーの記事はこちらからどうぞ。