ジュラ〜Jura〜

ジュラ地方のワインの特徴

ジュラ風景

ジュラ〜Jura〜

ジュラ風景 ドゥー

ジュラ地方はブルゴーニュの東に広がるワイン産地です。さらに東側はジュラ山脈で、山脈を越えるとスイスです。ぶどう畑はジュラ山脈の裾野に広がります。ジュラはケルト語で森の意味で、地質時代であるジュラ紀は、ジュラ山脈の石灰岩層から名付けられています。

ジュラ地方はジュラならではのヴァン・ジョーヌやヴァン・ド・パイユといったかなり癖の強いワインを造る産地として知られています。

ですが、それ以外の普通のワインももちろん魅力的です。全体的には真面目な味、派手さのない味のワインが多いと思います。どっしり地に足ついたワインです。癖の強いワインだけをみてジュラ地方を捉えようとすると逆に個性が分かりづらいように思います。

ぶどう栽培面積がフランス最小のとても小さなワイン産地です。

ワイン産地のジュラ地方はブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏のジュラ県に位置します。ジュラ県ではないですが、同地域圏にあるブザンソンの城塞や、アル=ケ=スナンの王立製塩所は世界遺産に認定されています。

ジュラ地方の歴史

ジュラ地方のぶどう栽培の始まりはわかっていませんが、紀元80年頃に触れられている記述がありますので、それ以前ということになります。

もともとジュラ地方やブルゴーニュ地方は、411年に興ったブルグント族の国、ブルグント王国の一部でした。現在のブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏と、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏、スイスのフランス語圏を合わせたものがほぼブルグント王国と一致します。

ブルグント王国はローマ帝国の同盟者の地域を得てこの地域を支配しますが、534年にフランク王国に滅ぼされました(その前にも一度、滅ぼされてから復活している)

ブルグントはフランス語でブルゴーニュの意味であり、ブルグント王国の滅亡後もブルゴーニュという名前は残り、ブルゴーニュ公国や現在のブルゴーニュ地方、カスティーリャ王国のブルゴーニュ朝の名前の由来となっています。

843年にフランク王国は3つに分割され、カロリング朝フランク王国は崩壊しますが、現在のブルゴーニュ地方とジュラ地方も分割されて統治されるようになります。

ブルゴーニュ地方はブルゴーニュ公国となり、ジュラ地方はブルゴーニュ伯領として統治されます。ブルゴーニュ伯領は神聖ローマ帝国領となりますが、臣従義務は免除されていて、フランシュ・コンテ(自由伯領)と呼ばれるようになります。

ブルゴーニュ公国が勢力を増してくると、14c末にブルゴーニュ伯領はブルゴーニュ公国と同盟を結び、その一部となります。15cのブルゴーニュ継承戦争を経てフランス領となりますが、その後スペイン・ハプスブルグ家に支配された時代を経て、17cに再びフランスに併合されました。

ジュラ地方の料理、食材

フランスのクラシックな雄鶏の煮込み料理にコック・オー・ヴァンがありますが、ジュラ地方には煮込み用びワインにこの地方のヴァン・ジョーヌを使用したコック・オー・ヴァン・ジョーヌという料理があります。

ヴァン・ジョーヌを煮込みやソースに使う料理は他にもジュラ地方にはありますが、ヴァン・ジョーヌの一番の使い方はソースなのではと思うくらい美味しいソースになります。そのまま飲むとクセが強すぎる感じはありますが、ソースや煮込みになると複雑な風味として生きて来ます(魚でも美味しい)

ジュラ地方ではザリガニ(エクルヴィス)をよく食べますが(海がないので淡水魚やザリガニを食べる)、クラシックな料理としてエクルヴィス・ソース・ナンチュアが知られています。ナンチュアソースはエクルヴィスの出汁のとクリームを合わせた濃厚なソースです。

セミハードタイプのコンテチーズもかなり有名で、フォンデュ・ジュラシエンヌというアルボワなどの白ワインとコンテを使ったチーズフォンデュもあります。

チーズは他にもモンドールやモルビエ、ブルー・ド・ジェックスなどがあります。


ジュラ地方の土壌

ジュラ地方からジュラ期と名付けられただけあって、ジュラ地方はブルゴーニュと同じくジュラ紀の石灰岩の土壌が多いのですが、意外なほど三畳紀の土壌もあります。ブルゴーニュ地方から東に80キロほどの所にジュラ地方はありますが、現在は間にブレス平野があるとはいえ、元々は同じ1つのエリアでした。アルプス造山運動により間の土地が沈み、そこに礫などが堆積し、ブルゴーニュとジュラは分かれました(行政上の地域圏は、ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域圏なのでブルゴーニュと同じ区分です)

ブルゴーニュと同じジュラ紀の地質と言っても、ジュラの地質はブルゴーニュよりもう少し古いジュラ紀初期のリアスのものが多いです。リアスの灰色泥灰岩と青色泥灰岩がジュラ地方の大部分を占めます。これら泥灰岩は粘土の比率が高い重く冷たい土壌です。その中でもしっかりと根を張れる強さがあるぶどう品種(サヴァニャンなど)が植えられています。

リアスが多いですが、ブルゴーニュと同じジュラ紀中期ドッガーのバジョシアンやバトニアンもありますし、先に書いたようにジュラ紀より古い三畳紀の土壌もあります。三畳紀の泥灰岩は赤っぽい色のものが多いです。これらの土壌はアルプスの造山活動などにより断層が生じ、入り組んでいます。

地質年代が古いほど基本的には暗い方向性です。どの地質年代にしろ石灰岩、泥灰岩が基本です。ぶどう畑は標高200〜400mくらいの所に広がっています。

ジュラ地方はフランスの中でも雨が多い地域です。雨は春に多いです。半大陸性気候で夏は暑く乾燥します。

ジュラ地方のぶどう品種

ジュラで使用される品種は白ぶどうのサヴァニャンや、近くのブルゴーニュとも共通するシャルドネもよく見かけます。シャルドネも美味しいものがありますしジュラにとって大事な品種ではありますが、特に注目すべきはサヴァニャンです。サヴァニャンは先に紹介したヴァンジョーヌで使用する品種でもあります。泥灰岩と相性が良いです。サヴァニャンはナチュレとも呼ばれます。非常に晩熟な品種です。

黒ぶどうだとプールサール、トゥルソー、ピノノワールが主要な品種です。プールサールは淡い色をしつつ、ピノノワールより少し輪郭のはっきりしたワインになります。トゥルソーはプールサールより強さがあり実態感がありますが、さらっと軽やかに造ったものが出来がいいように思います(これらの品種を使ったロゼも非常にクオリティが高いです)晩熟な品種ですがしっかりと熟したぶどうが美味しいです。

ピノノワールは15C頃にジュラ地方にもたらされた品種です。

他にも例えばアンヌ&ジャン・フランソワ・ガヌヴァがリリースしている、ヴァン・ド・フランス・ルージュ・ドゥ・トゥット・ボテはプチ・ベクラン、グロ・ベクラン、グーシュ、アルガンなど8種のジュラ古代品種を使ったワインです(樹齢50年のフルーリーとモルゴンのガメ70%が主体。ジュラの古代品種は台木不使用)古代品種は全く特徴を掴めていません。

ドメーヌ・ド・ラ・ボルドは、後述するアルボワ・ピュピヤンのエリアでナチュラルなワインを造る生産者です。品種の特徴を掴むのにわかりやすいので比べてみてください。

フードル・ア・カノン はサヴァニャン100%です。ジュラ紀前期リアスの灰色泥灰岩と青色泥灰岩土壌です。

コート・ド・カイヨはシャルドネ100%です。ジュラ紀中期のバジョシアン土壌です。

プールサール・コート・ド・フールは三畳紀の赤色泥灰岩土壌です。

トゥルソー・スー・ラ・ロッシュも三畳紀の赤色泥灰岩です。

ピノノワール・スー・ラ・ロッシュも三畳紀の赤色泥灰岩です。

ヴァン・ジョーヌ〜Vin Jaunes〜

ジュラヴァンジョーヌピュピアン

ジュラ地方のワインで有名なのは、他の地域にはない独特の風味をもったヴァン・ジョーヌです。

ヴァン・ジョーヌは黄ワインという名前の通り濃いめの水色で、酸膜酵母というシェリーなどとも共通する酵母の力を借りて酸化熟成させたユニークな、しかしクセになるワインを生産しています。シェリーなどと違い酒精強化していないスティルワインです。

ヴァン・ジョーヌは収穫翌年から6年目の12月15日までオーク樽で熟成させるのですが、その間の60ヶ月以上はウイヤージュ(目減り分のワインの補充)やスーティラージュ(澱引き)をしてはいけない決まりです。熟成中に酸幕酵母による皮膜が出来、ナッツやカレー系のスパイスを思わせる香味が生まれます(芳香成分のソトロンの香味)ヴァン・ジョーヌは先に書いた通り、料理のソースにしても美味しいです。

ヴァン・ジョーヌは様々な地域で造れますが、中でも秀逸とされる地域はシャトー・シャロンです。ヴァン・ジョーヌはどこで造っても認められているぶどう品種はサヴァニャンのみです。ヴァン・ジョーヌが誕生したのもシャトー・シャロンで、偶発的に生まれたとされています。

クラヴランという620mlの瓶で流通しています。

ドメーヌ・ド・サン・ピエールはアルボワの北西部に位置するマトネの造り手です。ほとんどのぶどうがアルボワのエリアです。ナチュラルなワイン。

ヴァン・ド・パイユ〜Vin de Paille〜

ジュラヴァンドパイユ

ジュラ地方でもう一つ有名なのがヴァン・ド・パイユです。藁ワインという意味だけあって、藁やスノコの上で乾燥させて(パスリヤージュ)、糖度を高めて造られた甘口ワインです(吊るす場合もある)ぶどう自体も遅摘みにして熟度を高めます。最低6週間、乾燥させてから発酵させます。乾燥により半分ほどの量になり、酸が減少して甘みは増します。

発酵も1年ほどかけて熟成にも2〜5年かけるという非常に手間のかかるワインです(その内木樽熟成の期間が18ヶ月)アルコール度数も高くなり17%に達するものもあります。ポ、またはドゥミ・クラヴランと呼ばれる375mlの専用のボトルに詰めて販売されます。

ぶどう品種はアペラシオンによって若干違いますが、サヴァニャン、シャルドネ、プールサール、トゥルソーです(ジュラ地方の主要品種としてはピノノワールが使えない)ヴァン・ジョーヌもヴァン・ド・パイユも個性的なジュラならではのワインです(ヴァン・ド・パイユはコート・デュ・ローヌ地方にも少しありますが)

他にはV.D.L.(ヴァン・ド・リキュール)であるマックヴァン・ド・ジュラというワインもあります(ぶどうジュースとブランデーをブレンドしたもの)。

ドメーヌ・ベルテ・ボンデはシャトー・シャロンに多くの畑を持つ造り手です。ビオロジック。シャルドネ40%、サヴァニャン40%、プールサール20%という比率です。

ジュラ地方のワイン生産地域

ジュラ地方には7つのA.O.C.があります(アルボワ・ピュピヤンを別にすると8)

ジュラ地方の北部に位置するのがアルボワです。アルボワ村の周辺に広がります。その中でもアルボワ南部にあるピュピヤン村の評価が高く、アルボワ・ピュピヤンを名乗ることが出来ます。

ジュラアルボワ

南下するとシャトー・シャロンがあります。シャトーと付くので分かりづらいですが、5つの村にまたがったアペラシオンです。サヴァニャンからヴァン・ジョーヌのみを造ります。

シャトー・シャロンの南西に位置するのがレトワールです。レトワール(エトワール)は星を意味しますが、ブルゴーニュにも広く分布しているウミユリの化石が星に見えるから名付けられたそうです(諸説あり)

レトワールは通常の白ワインの出来も良いですし、ヴァン・ジョーヌあるいはヴァン・ド・パイユも生産しています。赤ワインは認められていません。レトワールだけに限った話ではありませんが、特にレトワールは普通のスティルワインを造ってもヴァン・ジョーヌっぽい風味のものが多いです。なのでヴァン・ジョーヌぽいシャルドネもあります(ウイヤージュしないものもありますが、ウイヤージュしてもヴァンジョーヌぽい風味のものもある)

ジュラレトワール11

ジュラ地方を南北に細長く網羅するコート・デュ・ジュラというアペラシオンもあります。

ジュラ地方はスパークリングワインの生産量も多く、全域でクレマン・ド・ジュラが造られています。

ジュラ地方のワイン生産地域の詳しい紹介はこちらからどうぞ。

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