シラー〜Syrah〜
グルナッシュ同様、南仏で良くみかける黒ぶどう品種のシラー。
南仏品種のようですが、繊細で暑さにも強くなく、南仏の暑いエリアには適さない品種です。原産地はコート・デュ・ローヌです。コート・デュ・ローヌではスリーヌ(セリーヌ)と呼ぶ造り手もいますね。スリーヌはシラーの原種で、一般的な南フランスなどに広がっているシラーとは違うという話も聞いたことがあります。
味わいも繊細で、シラーは重いと思っている方も多いですが、強さはあっても重くはならない品種だと思います。
細身で芯が一本通っていて香りと一緒に味わいも上に抜けていきます。
カベルネフランとも似た動きをしますが、よりタイトで固く密度がしっかりしています。比べるとカベルネフランは少し弱弱しく感じます。カベルネフラン(シノンなど)は優しくしなやか、シラーはかっちり直線的強さがあってツルッとなめらかです。少し冷たい印象も受けます。
シラーは香りも強く、スパイシーで黒系果実のニュアンスがあります(場所によっては赤系果実ぽいものもある)水色もそうですが、紫色っぽい味がする気がします。
シラーの原産地は北ローヌで、やはり北ローヌのシラーが最高だと思います。コート・ロティは非常に強くガッチリしたシラーですし、エルミタージュのシラーは芯がありつつ伸びやかではエレガントです。コルナスは粗くワイルド。
どちらにしても真っ直ぐかっちりした個性ですが、北ローヌでもクローズエルミタージュだけは全く違った味わいです。
北ローヌのワイン産地は標高が高い斜面ばかりですが、クローズエルミタージュは平地でレスなどもある柔らかい土壌なので、シラーでも横幅があり芯も弱いです。それでも上に上がっていく感覚があるのがシラーの凄いところです。
南ローヌやラングドックなどではシラー単一ではなくブレンドされますが、グルナッシュやムールヴェードルとは性格が違いすぎるので上手くアッサンブラージュしないとバラバラな味わいになります。
ラングドックでシラーが生きるエリアは先に書いたような標高の高いところで、カバルデスやミネルヴォワ、ピク・サン・ルーなどです。
プロヴァンスでもシラーは良く使われますが、意外と標高も高く、クールな味わいのものが多いプロヴァンスには性格的にシラーが合っているように思います。
今ではアルザスにシラーを植えている造り手もいるそうで(アペラシオンは名乗れませんが)、飲んだことありませんが、とても良いと聞きます(そのくらい気候が変わってきているんですね。法律でガチガチのフランスは大変だと思う)
シラーはオーストラリアでも有名で、シラーズと呼ばれています。
シラーが重いワインだというイメージは、一昔前のオーストラリアのシラーズの影響だと思います。
強い抽出をかけてかなりしっかりと濃いシラーズがたくさん造られていました。ただそういったタイプのシラーズでもドンとした重たさはなかったです(重さと凝縮度の混同)
現在はオーストラリアのシラーズも土地の個性を生かした繊細なタイプが増えています。