ソムリエ試験対策〜ジュラ・サヴォワ地方〜
フランスのワイン産地の中でも目立たないジュラとサヴォワ。そしてジュラ・サヴォワと一まとめにされているのでセットで覚えている方が多いと思いますが、共通項のない違った方向性のワイン産地です。
ジュラ地方のプロフィール
フランス東部に広がる産地。ディジョンから90キロ。東側にはジュラ山脈があり、超えるとスイス。
ジュラ地方のぶどう品種と隣のブルゴーニュからのぶどう品種を用い、ヴァン・ジョーヌや、ヴァン・ド・パイユといった独特のワインを生み出している。
ぶどうの栽培面積はフランスで最小。
ジュラの歴史
ぶどう栽培は、紀元80年頃の記述で触れられている。13c以前にアルボワのワインが領主たちの間で好評だった史料が複数残されている。
ブルゴーニュ公国の支配下の時代も、その後の神聖ローマ帝国もワイン産業の保護と奨励を欠かさなかったため、16cには欧州全域で名声を獲得。
メモ
すごく大事なことがサラッと書かれています。この辺は歴史の話として別記事にします。
1678年、ルイ14世の時代にフランスに併合。
19c末には20000haあったぶどう畑は、フィロキセラの後、絶滅の危機に瀕して復活。ぶどう畑は最盛期の10分の1。
ジュラ地方の地方料理と食材
- コック・オ・ヴァン・ジョーヌ雄鶏のヴァン・ジョーヌ煮込み。シャトー・シャロンやヴァン・ジョーヌと。
- エクルヴィス・ソース・ナンチュア。ザリガニのナンチュアソース。ヴァン・ジョーヌと。
メモ
コック・オ・ヴァン・ジョーヌはとても美味しい。ソース・ナンチュアも見かけないですね。でもとても大切な伝統料理だと思います。
ジュラ地方のぶどう品種
白ぶどう
- サヴァニャン=ナチュレ。十字軍の時代にハンガリーの修道士がシャトー・シャロンの女子大修道院長に送ったのが始まりとされる。この品種からヴァン・ジョーヌが生まれる。他の品種より熟すのが15日遅い。シャトー・シャロンの灰色の泥灰土を好む。
- シャルドネ=ムロン・ダルボワ。10cにはジュラ地方で栽培されていた。ジュラの栽培面積の50%を占める。
黒ぶどう
- プールサール。15cからジュラ地方で栽培されている。ジュラの赤ワインの80%を占める。果肉に対して果皮が薄いため、色調は淡い。泥灰質、粘土質を好む。
- トゥルソー。フランシュ・コンテ原産。起源は18c頃。他の品種より日照量必要。砂利質や深くない泥灰質好む。タンニン強い。
- ピノノワール。15c頃から栽培。ジュラ地方で最も早く熟す。
ジュラ地方の特殊なワイン
ヴァン・ジョーヌ
品種はサヴァニャンのみ。白ワインを造り小樽でウイヤージュ(補酒)せずに熟成(収穫から6年目の12月15日まで。出荷は7年目の1月1日以降)
最低60ヶ月は産膜酵母下で熟成。
色調が徐々に黄色になり、ヴァン・ジョーヌ(黄色ワイン)と呼ぶ。
シャトー・シャロンで偶発的の生まれたと考えられている。
クルミやヘーゼルナッツのような複雑なフレーバー。
クラヴランという62cl(620ml)のボトルに詰める。
ヴァン・ド・パイユ
品種はシャルドネ、サヴァニャン、プールサール、トゥルソー。
陰干しぶどうから造られる甘口ワイン。
ぶどうをすのこの上で最低6週間乾燥。圧搾時の糖度は320g/
l以上、420g/l未満。
最低熟成期間は収穫から3年目の11月15日まで、うち18ヶ月以上は大樽熟成。ゆっくりした発酵で約一年かけて14.5〜17%のアルコール度数になる。
ジュラ地方のA.O.C.
- アルボワ(全てのタイプのワイン可能。ジュラ地方最大のA.O.C.。赤ワイン生産量の70%)
- アルボワ・ピュピヤン(アルボワ南部ピュピヤンで造られているワインはアルボワ・ピュピヤンを名乗れる。全てのタイプのワイン可能。特にプールサールの赤ワインの評判がいい)
- コート・デュ・ジュラ(全てのタイプのワイン可能。サヴァニャンとシャルドネをアッサンブラージュした辛口白ワインの生産量が多い)
- シャトー・シャロン(ヴァン・ジョーヌのみ。10c前に建てられた女子大修道院がこのワインの名声を各国宮廷に広めた。シャトー・シャロンは他のヴァン・ジョーヌと比べて繊細で上品)
- レトワール(白、ヴァン・ジョーヌ、ヴァン・ド・パイユ。レトワールは星という意味。レトワール村が5つの丘陵に囲まれ、星のように見えることと、土壌に星形をした化石が見られることの由来。シャルドネとサヴァニャンの辛口白ワイン多い)
- クレマン・デュ・ジュラ(ロゼと白の発泡性。瓶内二次発酵。瓶内熟成最低9ヶ月。ティラージュ後、最低12ヶ月で販売可能。ジュラ地方では18c末からスパークリングワインを造っている)
- マクヴァン・デュ・ジュラ(赤、ロゼ、白。VDL。コート・デュ・ジュラと同エリア。ぶどう収穫時の最低糖度は170g/l以上。果汁または発酵初期段階にオー・ド・ヴィを添加(フランシュ・コンテ産。アルコール度52%以上)1年以上の樽熟成。アルコール度数16〜22°。
- マール・デュ・ジュラ(ジュラ地方のA.O.C.ワインの搾りカスから造る蒸留酒。ジュラの定番5品酒+ピノグリ。サヴァニャンを含む3品種のブレンド。最低24ヶ月熟成。最低アルコール度数40%。
メモ
アペラシオン少ないので覚えるのが簡単ですね。個人的には少ない方が理解するのが難しいようにも思っていますが。シャトー・シャロンは特殊なので置いておいて、アルボワ、レトワール、コート・デュ・ジュラの地域の違いから覚えていくと良いと思います。レトワールは赤ワインとロゼワインはなしです。
サヴォワ地方のプロフィール
フランス東部、アルプス山脈の麓に位置。スイス、イタリアと国境を接する。この三国にまたがって支配していたサヴォワ(サヴォイア)公国の時代が長く、フランス領になったのは1860年。
ぶどう畑は、レマン湖畔からローヌ川沿い、ブルジェ湖の周辺を経て、かつてのサヴォワ公国の首都であるシャンベリー近郊までのアルプスの美しい山岳地帯に点在。
サヴォワのワイン産地は大きくヴァン・ド・サヴォワのエリアと、ローヌ川西側のビュジェイのエリアに分かれる。
経済の中心は観光業で、ワインも観光客による地元消費が大きく、輸出は全生産量の5%。
土壌は急流がアルプス山脈を侵食し運んできた砂質、砂利質の沖積土や氷河により堆積した土砂(モレーン)石灰質砂岩、泥灰質、石灰岩など。
気候は大陸性の影響を受け、北風が寒く乾燥した空気をもたらすが、南風は暖かさをもたらし、西風は海からの湿気を吹き込み、大陸性気候の厳しい気温差を和らげる。
晩秋の気温も高め。降雨量も多い地域。
ワインの生産は白ワインが70%、赤ワインが20%、ロゼワインが6%、発泡性ワインが4%。
サヴォワ地方の料理と食材
- フォンデュ・サヴォワイヤルド(サヴォワ風チーズフォンデュ。ヴァン・ド・サヴォワ・クレピーと)
- トリュイト・オ・ブルー(マスのクールブイヨン煮。ヴァン・ド・サヴォワ・クレピーと)
メモ
隣のスイス同様、サヴォワと言えばチーズ。
サヴォワの品種
- シャスラ
- アルテス=ルーセット(キプロス島からもたらされたと言われる。果実が熟した時、Rousse(赤褐色)になることに由来)
- ジャケール(サヴォワ地方での栽培面積最大。約半分を占める)
- グランジェ(ヴァン・ド・サヴォワ内のエーズで栽培)
- ルーサンヌ(ヴァン・ド・サヴォワ内のシニャン・ベルジュロンで栽培)
- モンデューズ(サヴォワを代表する黒ぶどう。晩熟)
サヴォワ地方のA.O.C.
- ヴァン・ド・サヴォワ(赤、ロゼ、白。単一品種の場合は品種名明記可。16のクリュがあり、クリュ名をヴァン・ド・サヴォワに続けて付記できる。クリュごとに品種などの規定あり)
- ヴァン・ド・サヴォワ・ムスー、ヴァン・ド・サヴォワ・ペティヤン(ロゼと白の発泡性。瓶内二次発酵。9ヶ月以上熟成)
- クレマン・ド・サヴォワ(発泡性白。ジャケール40%以上)
- ルーセット ・ド・サヴォワ(白。アルテスを使った白ワイン。ヴァン・ド・サヴォワとほぼ同じエリア。ルーセット ・ド・サヴォワもクリュ表記可能)
- セイセル(辛口〜半甘口白。アルテス100%。
- セイセル・モレット(白。モレット100%)
- セイセル・ムスー(発泡性白。アルテス、シャスラ、モレット。瓶内二次発酵。9ヶ月以上熟成)
- ビュジェイ(赤、ロゼ、白。赤ワインとロゼワインはピノノワール、ガメイ、モンデューズのぶどうを単一で。ビュジェイ・ムスーと、ビュジェイ・ペティヤンは発泡性のロゼまたは白ワイン。瓶内二次発酵。9ヶ月以上の熟成)
- ビュジェイ・マニクル(赤、白。赤ワインはピノノワール100%。白ワインはシャルドネ100%)
- ビュジェイ・モンタニウ(赤。赤ワインはモンデューズ100%。ビュジェイ・モンタニウ・ムスー、ビュジェイ・モンタニウ・ペティヤンは発泡性の白で、ぶどう品種はアルテス、シャルドネ、モンデューズの3品種が70%以上。瓶内二次発酵。9ヶ月以上の熟成)
- ビュジェイ・セルドン・メトード・アンセストラル(発泡性甘口ロゼ。ガメイ、プールサール。プールサールが単一不可。残糖22〜80g/l)
- ルーセット・ド・ビュジェイ(白。アルテス100%。クリュとしてモンタニウとヴィリウ・ル・グランを付記することが出来る)
ヴァン・ド・サヴォワのクリュはアビム、シニャン、クリュエ、ショーターニュ、サン・ジョワール・プリウレ、モンメリアン、ジョンジュー、シニャン・ベルジュロン、マラン、マリニャン、リパイユ、クレピィ、エイズ、アルバン、サン・ジャン・ド・ラ・ポルト。
メモ
ヴァン・ド・サヴォワのクリュはとりあえずは名前を覚えることろからで良いですが、それぞれ品種も違えば特徴も違うので少しづつ学んでいきたいところです(サヴォワの肝)
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