シュナン・ブラン〜Chenin blanc〜
ソーヴィニヨン・ブランと並ぶ、ロワール地方の基幹白ぶどう品種のシュナン・ブラン。ソーヴィニヨン・ブランとは反対の個性で、むしろ使いやすいのはシュナンブランの方です。
ですが人気の点ではソーヴィニヨン・ブランに大きく差をつけられている印象です。
シュナンブランの原産地はロワール地方のアンジュだと考えられています。アンジュを含むロワール地方で広く栽培されているシュナン・ブランですが、現在は南アフリカでも多く栽培されていて、栽培面積は圧倒的にフランスより南アフリカの方が多いです。
もしかしたら知名度としても南アフリカの方が上かもしれません?シュナン・ブランと言うと南アフリカのワイン?と聞かれたことが何度もありますしね。
シュナン・ブランは丸い質感で、りんごのようなニュアンスが魅力です。表面は丸くても中心部には硬さがあります。強い酸も特徴の一つです。控えめな性格の品種です。
シュナン・ブランは他にもシュナン・グリやシュナン・ノワール、飲んだことありませんが、南アフリカにはシュナン・ロゼやシュナン・ルージュというのもあるそうです。ノワールとルージュがありますが別のようですね。
シュナン・ノワールはピノドニスという名前の方が知られているように思います。
ロワールのアンジュやトゥーレーヌで多く栽培されているシュナン・ブランですが、アンジュとトゥーレーヌでは味わいの方向性が違います。
トゥーレーヌの白ワインはソーヴィニヨン・ブランですが、デノミナシオンのトゥーレーヌ・アゼ・ル・リドーとトゥーレーヌ・アンボワーズはシュナン・ブランのワインという面白い規定です。
トゥーレーヌ ・アゼ・ル・リドーのシュナンブランはシュナン・ブランの中では硬質な味わいです。トゥーレーヌ・アンボワーズもアゼ・ル・リドーほどではないですが、硬めで伸びやかです。
トゥーレーヌでは比較的硬い土壌でシュナン・ブランが認められていると言えます。
シュナンブランは生産量としてはかなり多いのですが(昔はシャルドネより多かった)、日本ではそこまで頻繁には見ませんね。フランス国内のビストロなどでの消費は多いように思います。
アンジュのシュナン・ブランは丸みがあってどっしり重めです。アンジュだけではなく、より格上のサヴニエールでも同様です。
アンジュにはコトー・デュ・レイヨンなど、シュナン・ブランの甘口のアペラシオンが多いです。シュナン・ブランは完熟させたり、貴腐を付けるなどして甘口にするとより魅力が増すように思います。甘口にしても酸がしっかりある品種なので、ただ甘いだけのワインにならないところも良い部分です。
トゥーレーヌのデノミナシオンではトゥーレーヌ・アゼ・ル・リドーは甘口も認められています。
シノンやソーミュールの白ワインもシュナンブランです。ヴーヴレも人気です。あとはジャスニエールもシュナン・ブランの白ワインとして知られていますね。
シノンは赤ワインほどではないですが、品のある味わいです。
ソーミュールのシュナン・ブランはアンジュのシュナン・ブランと比べるとずっと軽やかです。
ヴーヴレは補助品種も認められていますが、ほぼシュナン・ブランのアペラシオンで、結構かっちりです。甘めのスパークリングが一番知られていますね。
ジャスニエールはまっすぐミネラリーでかっこいい味わい。
シュナンブランは昔はボルドーの周辺にも栽培されていました。そしてアペラシオンのブライやコート・デ・ブライで認められていました。
現行法では認められていませんが、以前の規定で2025年までは認められていたので、まだシュナン・ブランが使われているワインがあるのかもしれません。
ボルドーでは認められなくなったシュナン・ブランですが、隣の南西地方ではまだ少し見かけます。
ボルドーから地続きのコート・ド・デュラスではシュナン・ブランは主要品種ですし、その東側のベルジュラックやモンバジャック、ソーシニャックなどで補助品種として使用可能です。
トゥールーズ周辺のエリアのアントレイグ・ル・フェルとエスタン、コート・ド・ミヨーなどでも主要品種となっています。
さらに東側に進んだラングドック、リムーでもシュナン・ブランを使用したスティルワインとスパークリングワインが認められています。
リムーのシュナン・ブランを使用した泡、ブランケット・ド・リムーは、ロワール以外で最も有名なシュナン・ブランのアペラシオンだと思います。
とはいえリムーはシュナン・ブランの他にモーザックとシャルドネも使用可能で、実際はモーザックがリムーにとってもっとも大事な品種です。ブランケット・ド・リムー・メトード・アンセストラルになるとシュナン・ブランは使えません。モーザック100%です。スティルワインだとリムーはシャルドネが人気ですね。