シャンボール・ミュジニー〜Chambolle-Musigny〜
シャンボール・ミュジニーは、北部はモレ・サン・ドニ、南部はヴージョ、そしてフラジェ・エシェゾー村と接しています。
シャンボール・ミュジニーはコート・ド・ニュイの中でももっともエレガントなワインを生むと言われている村で、他の村と比べて粘土が少なめで石灰岩が多く、華やかで、すっと香りが伸びていきます。単純な華やかさではなく妖艶な感じがするのも、多くの人を虜にする理由でしょう。
チャーミングとも言われますが、そういうワインもあるとはいえ、全体としては暗めで大人びた雰囲気だと思います。香り高く、かつ内に秘めた強さがあるのがシャンボール・ミュジニーです。
村名もプルミエクリュも赤ワインのみで、グランクリュのミュジニーのみ白ワインが認められています。
シャンボール・ミュジニーのグランクリュ
シャンボール・ミュジニーのグランクリュは2つ、ミュジニーとボンヌ・マールです。グランクリュは村の両端にあり、北側がボンヌ・マールで、一部はモレ・サン・ドニに含まれます。南端にあるのがミュジニーです。
ミュジニー〜Musigny〜
ミュジニーはコート・ドールにグランクリュの中でも特に人気のある畑で、値段も非常に高いワインです。ミュジニーの名前の由来はガロロマン時代の領主だったMusinusからきていると言われます。
ミュジニーは1110年にピエール・グロという方から、シトー派修道院に寄進された畑と言われています。いくつかに分割され現在に至ります。
ミュジニーは迫力のある強い味で、よく言われるシャンボール・ミュジニー らしい女性的な味わいではないです。特にミュジニーの最大保有者のヴォギュエのワインは大地っぽいというか、エレガント方向の味わいではないです。難しい味というか不思議な味で、上級者向けのワインだと思います。
ミュジニーは3つの区画に分かれていて、北から、
- レ・ミュジニー〜Les Musigny〜
- レ・プティ・ミュジニー〜Les Petits Musigny〜
- ラ・コンブ・ドルヴォー〜La Combe d’Orveau〜(大部分はプルミエクリュ)
となっています。ミュジニーの最大所有者はドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエで、全体の7割を所有していて、プティ・ミュジニーに関しては単独所有です。
北部のレ・ミュジニーが1番標高が高くなっています。
プティ・ミュジニーの上部にはシャルドネも栽培されていて、1993年まではミュジニー・ブラン(コート・ド・ニュイ唯一の特級白)を造っていましたが、現在は植え替えを行なったため、デクラセしてブルゴーニュ・ブランで販売されています。
コンブ・ドルヴォーは基本的にプルミエクリュですが、南側に1929年と1989年に編入されたグランクリュ区画があります(ジャック・プリウール所有)
ジャック・フレデリック・ミュニエは、レ・ミュジニーにいくつかの区画を持っていて、レ・ミュジニーの味わいを理解するのに最適です。
グランクリュ街道を挟んだ反対側にも二箇所、ミュジニーの区画がありますが、ないものと考えていいかと思います。
ミュジニーは基本、バトニアンのコンブランシアン石灰岩で、水はけが良い土壌です。上部には泥灰岩(レ・ミュジニーの上部)、下部にはウーライトがあります(レ・プティ・ミュジニー)
泥灰岩の下部には崩落土のところもあります。全体的に表土が薄く、急斜面なのもミュジニーの特徴です。
生産者の持っている区画によって、これらの土壌の組み合わせの味になります(コンブランシアン単一土壌の造り手もいる)
レ・プティ・ミュジニーは先述の通り、ヴォギュエの単独所有ですが、他の区画とブレンドしてミュジニーを造っています。プティ・ミュジニーのみの味は想像するしかないです。
全体的にはミュジニーはかっちり硬質な味わいです。マルヌの区画を持っている造り手のミュジニーはもう少し柔らかくなります。ボリューム感とかそういう部分を期待する畑ではないです。硬くて強いのがミュジニーです。
ボンヌ・マール〜Bonnes Mares〜
ボンヌ・マールの名前の由来は、丁寧に耕すという意味の古仏語のmarerから来ていると言われています(古代の母神像から来ているとも)
ボンヌ・マールの土壌は、畑を対角線上に横切る農道を境目にして、農道の下は赤黒っぽい表土のバジョシアンのウミユリ石灰岩(テールルージュ)、農道の上はバジョシアンの泥灰岩(テールブランシュ)と言われています。
ミュジニーと比べるとずいぶんと緩斜面です。
ボンヌ・マールは基本的に、肉厚なワインだと思います。包み込むような余韻が非常に長く続きます。
斜面の上の方(テールブランシュ)になると洗練度は増します。両方の区画をバランスよく持っている造り手はかなり少ないです。ボンヌ・マールもミュジニー同様、ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエが最大所有者ですが、所有区画はほぼ斜面下部のテール・ルージュです。
ジョルジュ・ルーミエはボンヌ・マールの様々な区画を所有していますので、バランスの取れた味わいです。上部が多いので繊細さもあるボンヌマールです。ジャック・フレデリック・ミュニエも比較的バランス良く畑を所有しています。
ロベール・グロフィエは下部のテールルージュのみ、ユドロ・バイエは、上部のテール・ブランシュのみの所有です。他の造り手はだいたいどちらかの区画が多く、もう片方の区画も少し持っているみたいな感じです(標高などでも大きく味わいは変わる)
ミュジニーもボンヌ・マールも方向性は違いますが、どちらもよく言われるシャンボール・ミュジニー的ではないと思います。
シャンボール・ミュジニーのプルミエクリュ
シャンボール・ミュジニーには24のプルミエクリュがあります。評価の高いプルミエクリュはいくつもありますが、特に有名なのはレ・ザムルーズです。
シャンボール・ミュジニーのプルミエクリュ(24)
- レ・サンティエ〜Les Sentiers〜
- レ・ボーデ〜Les Baudes〜
- レ・ラヴロット〜Les Lavrottes〜
- レ・ノワロ〜Les Noirots〜
- レ・ヴェロワイユ〜Les Véroilles〜
- レ・フュエ〜Les Fuées〜
- レ・クラ〜Les Cras〜
- デリエール・ラ・グランジュ〜Derrière la Grange〜
- レ・グリュアンシエール〜Les Gruenchers〜
- レ・グロセイユ〜Les Groseilles〜
- オー・ボー・ブリュン〜Aux Beaux Bruns〜
- オー・ゼサンジュ〜Aux Echanges〜
- レ・カリエール〜Les Carrières〜
- レ・シャトロ〜Les Chatelots〜
- レ・コンボット〜Les Combottes〜
- オー・コンボット〜Aux Combottes〜
- レ・フスロット〜Les Feusselottes〜
- レ・シャルム〜Les Charmes〜
- レ・プラント〜Les Plantes〜
- レ・ボルニック〜Les Borniques〜
- レ・シャビオ〜Les Chabiots〜
- レ・ゾー・ドワ〜Les Hauts Doix〜
- レ・ザムルーズ〜Les Amoureuses〜
- ラ・コンブ・ドルヴォー〜La Combe d’Orveau〜
レ・サンティエ〜Les Sentiers〜
レ・サンティエは、ボンヌ・マールの下部に位置し、モレ・サン・ドニのプルミエクリュ、レ・リュショットにも接しています(ボンヌ・マールとは、一部、小径を挟んで接しているが大部分は間にレ・ボーデが入り込んでいる)
表土が厚く、粘土質が強い土壌です。シャンボールというよりモレ・サン・ドニっぽい。ちょっと緩い感じ。
レ・フュエ〜Les Fuées〜
ボンヌ・マールと評価の高いプルミエクリュ、レ・クラの間の畑。表土は浅め。香り高く抜けがいいワイン。綺麗でまっすぐ。フローラル。シャンボール・ミュジニーのプルミエクリュの中でもトップクラスの良い畑。
レ・クラ〜Les Cras〜
レ・ザムルーズと並んで評価の高い畑はレ・クラです。レ・クラは標高も高く、さらりとして重心が上、少し引き締まったテイストです。ボンヌ・マールと同程度の標高です(ボンヌ・マールからレ・フュエを挟んだ隣です)
非常に軽やかなワイン。上部には村名区画もあります。ボンヌ・マール側のワインですが粘土っぽさがない畑。
デリエール・ラ・グランジュ〜Derrière la Grange〜
デリエール・ラ・グランジュは納屋の裏、というような意味の畑です。レ・クラやレ・フュエの下部に位置します。上部の畑と比べて粘土が多く、大きく丸く、土っぽい味わいです。
ドメーヌ・アミオ・セルヴェルのデリエール・ラ・グランジュが有名ですが、実際はグリュアンシエールだそうで、デリエール・ラ・グランジェを所有しているのは、コンフュロン・コトティドです。
レ・フスロット〜Les Feusselottes〜
シャンボール・ミュジニー村の中央部あたりに位置するレ・フスロット。街を挟んだレ・クロの下部に位置します。厚い表土。石灰のカチッとした部分がありつつしなやか。暗めの雰囲気。フローラルというよりはスパイシー。
レ・シャルム〜Les Charmes〜
レ・シャルムも評価が高いプルミエクリュです。プルミエクリュが集まっているエリアの中心に位置します。シャルムはチャーミングの意味ですが、味わいもその名の通り可愛らしい印象があります。ただ単純にチャーミングなワインではなく、石灰岩の堅牢さも併せ持ちます。シャンボール・ミュジニーのプルミエクリュの中で最も広く、下部は非常に柔らかい(石灰もない)。クリュのどこを所有しているかで印象が結構変わってしまうワインです。
レ・ザムルーズ〜Les Amoureuses〜
シャンボール・ミュジニーのプルミエクリュの中で最も知名度の高いのがレ・ザムルーズです。グランクリュのミュジニー下部(東部)に位置します(一部はミュジニーの北部にもありますが、有名生産者の多くは下部に区画を所有しています)
レ・ザムルーズの先はヴージョです。最大所有者はドメーヌ・ロベール・グロフィエ。ロベール・グロフィエも人気ですが、より評価が高い造り手はドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ、ドメーヌ・ジョルジュ・ルーミエ、ドメーヌ・ジャック・フレデリック・ミュニエのレ・ザムルーズかなと思います。
三名ともミュジニーから小道を挟んですぐの区画です(それ以外にも少し持っていますが)
もともと有名な区画ですが、日本で人気が爆発したのは、漫画、神の雫の第一使徒にルーミエのアムルーズ(定冠詞なし)が選ばれたからでしょうか?加えてアムルーズの名前の意味が「恋人たち」と訳されたことも人気になった1つの要因だと思います(実際は少しニュアンスが違いますが)
レ・ザムルーズはプルミエクリュではありますが、グランクリュと同等、またはボンヌ・マールより上に考えられることもある畑です。南東向き斜面で、表土は浅く、ミュジニーから続く石灰が強めの土壌です。
カチッとして明るくて、シンプルというか雑さのないストレートな味わいです(そこまで複雑といった感じのワインではない)
シャンボール・ミュジニーの代表的な造り手
- ドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエ〜Domaine Comte Georges de Vogue〜
- ドメーヌ・ジョルジョ・ルーミエ〜Domaine George Roumier〜
- ドメーヌ・ジャック・フレデリック・ミュニエ〜Domaine Jacques-Frederic Mugnier〜
- ドメーヌ・ロベール・グロフィエ〜Domaine Robert Groffier〜
- ドメーヌ・アミオ・セルヴェル〜Domaine Amiot Servelle〜
- ドメーヌ・ベルナール・セルヴォー〜Domaine Bernard Serveau〜
こちらはコート・ド・ニュイのアペラシオン⑥〜ヴージョ〜の詳しい紹介です。