ソムリエ試験対策〜ラングドック・ルーション地方〜
ラングドック・ルーションと一まとめで覚える産地ですが、ラングドックとルーションはぶどう品種は同じような感じですが、文化的に結構違います。きちんと分けて考えたいところです(一つの大きなワイン産地として協力してプロモーションをしてきたという側面もありますが)
ラングドックはアペラシオンが多く、ルーションは逆に少ないです。少ない方が楽な気がしてしまいますが、実際はラングドックのように地域が分かれている方がその土地の個性が見えやすいです。
安ワインの供給力脱却した今のラングドックやルーション地方はとても探求しがいのある面白い産地です。脱却したといっても今でも価格がお手頃なのも魅力です。
価格以上のクオリティのワインに出会いやすい地域と言えます。
ラングドック・ルーション地方のプロフィール
フランス南部、地中海沿岸のワイン産地。プロヴァンス地方とはローヌ川を境に西隣。
今日ではミディピレネー地域県(南西地方)と統合され、オクシタニー地域圏を形成。
ラングドック・ルーション地方自体がラングドックとルーションの合併したもの。
急速にA.O.C.が増えているが、それでもI.G.P.ワインの生産量がこの地方全体の70%以上を占め、フランス全体のI.G.P.ワインの80%に相当する。
ラングドックには古代ローマ時代の遺跡が数多く存在する。
ラングドック・ルーション地方の歴史
紀元前2世紀にローヌ川西岸の地域がローマに属州となる前から、ぶどう栽培が行われていた。
ラングドック地方はアルビジョワ十字軍の勝利によって、13cにフランス王国に編入された。ルーション地方は17cにカタルーニャ君主国からフランス王国に割譲。
メモ
この辺りの歴史も別記事予定。
かつては水代わりに飲まれる大量生産ワインの供給地であったが、そのような消費形態の衰退に伴い、80年代から品質の追求が始まる。
現在の有名産地がA.O.C.を取得したのは80年代以降。
ラングドック・ルーションの気候風土
大部分が地中海性気候で冬はおだやか、夏暑く乾燥。雨はほとんど降らない。トラモンタンと呼ばれる乾いた風により、ぶどう畑は過度の暑さから守られる。
産地は広範囲に及ぶため多様な土壌。一般的に海沿いは砂質、石灰質、あるいは粘土で、山側はシスト、泥灰岩、赤砂利など。
乾燥しているので病害のリスクが少なく、フランスで有機栽培をしているぶどう畑の1/3を占める。全世界でも7%相当。
ラングドック・ルーション地方の主要ぶどう品種
白ぶどう
- グルナッシュブラン
- ブールブーラン
- ピクプール
- クレーレット
- ヴェルメンティーノ
- マルサンヌ
- ルーサンヌ
- シャルドネ
- マカブー(マカベオ)
- ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン(ミュスカ・ド・フロンティニャン)
- ミュスカ ・ダレクサンドリー
黒ぶどう
- グルナッシュ
- ムールヴェードル
- シラー
- カリニャン
- サンソー
- モラステル
ラングドック・ルーションの地方料理と食材
- ブランダード・ド・モリュ(タラとジャガイモのピュレ)
- カスーレ(カルカッソンヌやカステルノダリー名物の白インゲン豆の煮込み。鴨のコンフィや豚足など、地方により加える具材が異なる)
- ガルディアンヌ・ド・トロー(カマルグ名物の雄牛の煮込み)
- オリーヴ・ド・ニーム(1995年にA.O.C.取得したオリーヴ。オリーヴオイルも2007年に取得)
ラングドック 地方の主要なA.O.C.
- ラングドック(白、赤、ロゼ。広域A.O.C.。赤ワインとロゼワインの新酒はプリムールまたはヌーヴォーの表記可。11の地理的名称が認められている)
- ラングドック・カブリエール(赤、ロゼ。ラングドックの地理的名称の一つ)
- ラングドック・グレ・ド・モンペリエ(赤のみ。ラングドックの地理的名称の一つ。以下に続く地理的名称付きラングドックは全て赤ワインのみ)
- ラングドック・ラ・メジャネル
- ラングドック・モンペイルー
- ラングドック・ペズナス
- ラングドック・カトゥルズ
- ラングドック・サン・ドレゼリー
- ラングドック・サン・クリストル
- ラングドック・サン・ジョルジュ・ドルク
- ラングドック・サン・サトゥルナン
- ラングドック・ソミエール
- ピック・サン・ルー(赤、ロゼ。2017年に地理的名称付きラングドックから独立。主要品種はシラー、グルナッシュ、ムールヴェードル)
- テラス・デュ・ラルザック(赤ワインのみ。2014年、地理的名称付きラングドックから独立。主要品種はグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー。3品種以上のブレンド)
- クレーレット・デュ・ラングドック(白、V.D.L.、ランシオ。クレーレットのみが認められたA.O.C.)
- ピックプール・ド・ピネ(ピックプール100%の白ワインのみ。2013年地理的名称付きラングドックから独立)
- フォジェール(白、赤、ロゼ。赤ワインとロゼワインの主要品種はグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、レドネール・プリュ。白ワインの主要品種はグルナッシュブラン、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴェルメンティーノ)
- サン・シニアン(白、赤、ロゼ。赤ワインとロゼワインの主要品種はグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、レドネール・プリュ。白ワインの主要品種はグルナッシュブラン、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴェルメンティーノ)
- サン・シニアン・ベルルー(赤ワインのみ。主要品種はグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー。主要品種の合計40%以上)
- サン・シニアン・ロックブラン(赤ワインのみ。主要品種はグルナッシュ、シラー。主要品種の合計50%以上)
- ミュスカ・ド・リュネル(V.D.N.の白。ミュスカ ・ブラン・ア・プティ・グラン100%)
- ミュスカ・ド・ミルヴァル(V.D.N.の白。ミュスカ ・ブラン・ア・プティ・グラン100%)
- ミュスカ・ド・フロンティニャン(V.D.N.の白、V.D.Lの白。ミュスカ ・ブラン・ア・プティ・グラン100%)
- ミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワ(V.D.N.の白。ミュスカ ・ブラン・ア・プティ・グラン100%)
- ミネルヴォワ(白、赤、ロゼ。赤ワインとロゼワインの主要品種はグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、レドネール・プリュ。白ワインの主要品種はブールブーラン、グルナッシュブラン、マカブー、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴェルメンティーノ)
- ミネルヴォワ・ラ・リヴィニエール(赤ワインのみ。主要品種はグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、レドネール・プリュ)
- ラクラープ(白、赤。赤ワインの主要品種はグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー。白ワインはブールブーラン主体)
- コルビエール(白、赤、ロゼ。赤ワインの主要品種はカリニャン、グルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、レドネール・プリュ。白ワインの主要品種はブールブーラン、グルナッシュブラン、マカブー、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴェルメンティーノ)
- コルビエール・ブートナック(赤ワインのみ。主要品種はグルナッシュ、ムールヴェードル。カリニャンは補助品種だが、使用は必須で実質カリニャンのA.O.C.)
- フィトゥー(赤ワインのみ。エリアは沿岸部と内陸部の2つに分散。主要品種はカリニャン、グルナッシュ)
- カバルデス(赤、ロゼ。カベルネフラン、カベルネソーヴィニヨン、メルロを単独または合計で40%以上、グルナッシュとシラーを単独または合計で40%以上)
- マルペール(赤、ロゼ。2007年にV.D.Q.S.から昇格。赤ワインの主要品種はメルロ。ロゼワインはカベルネフラン40%以上)
- リムー(赤、白。赤ワインの主要品種はメルロ。白ワインの主要品種はシャルドネ、シュナンブラン、モーザック)
- リムー・メトード・アンセストラル(モーザック100%。アンセストラル法の発泡性白ワイン)
- リムー・ブランケット・ド・リムー(モーザック90%以上。瓶内二次発酵の発泡性白ワイン。9ヶ月以上の熟成)
- クレマン・ド・リムー(発泡性白、発泡性ロゼ。主要品種はシャルドネ。補助品種はシュナンブラン、モーザック、ピノノワール。瓶内二次発酵。9ヶ月以上熟成)
メモ
さらっと並べて書いていますが、面白い産地がいくつもあります。是非深掘りを!
ラングドックワインの階層化
ラングドック委員会は、ラングドック、グラン・ヴァン・デュ・ラングドック、クリュ・デュ・ラングドックの3段階にアペラシオンを階層化した。
最高位のクリュ・デュ・ラングドックは、
- ラ・クラープ
- フォジェール
- サン・シニアン・ベルルー
- サン・シニアン・ロックブリュン
- ミネルヴォワ・ラ・リヴィニエール
- コルビエール・ブートナック
メモ
法的なものではありませんが、試行錯誤しながらクリュの選定をしている印象を受けます。このアペラシオンもクリュ・デュ・ラングドックにふさわしいのでは?などといった意見というか疑問みたいなものもありますが、概ね同意見です。
ルーション地方の代表的なA.O.C.
- コート・デュ・ルーション(白、赤、ロゼ)
- コート・デュ・ルーション ・ザスプル(赤ワインのみ)
- コート・デュ・ルーション・ヴィラージュ(赤ワインのみ)
- コート・デュ・ルーション・ヴィラージュ・カラマニ(赤ワインのみ)
- コート・デュ・ルーション・ヴィラージュ・ラトゥール・ド・フランス(赤ワインのみ)
- コート・デュ・ルーション・ヴィラージュ・レスケルド(赤ワインのみ)
- コート・デュ・ルーション・ヴィラージュトータヴェル(赤ワインのみ)
- コルウール(白、赤、ロゼ。後述するV.D.N.のアペラシオンであるバニュルスと同じエリア)
- モーリー(赤ワインのみ。後述するV.D.N.のアペラシオンであるモーリーと同じエリア。スティルの赤ワインは2011年に認められた)
コート・デュ・ルーションは白ワイン、赤ワイン、ロゼワインが認められているが、ヴィラージュは赤ワインのみ(コミューン銘柄付いたザスプルも)
細かい規定はそれぞれ異なるがルーションの赤ワインはカリニャン、グルナッシュ、ムールヴェードル、シラーが主体。
ルーション の酒精強化ワイン
- モーリー(V.D.N.赤、V.D.N.白。1936年、A.O.C.制定と同時に認定。グルナッシュ主体のグルナとテュイレ、白ぶどうのみのアンブレ、ブランがある。5年以上熟成させたものはオール・ダージュ表記可。ランシオ香が生じたものはランシオ表記も可)
- バニュルス(V.D.N.赤、V.D.N.白、V.D.N.ロゼ。1936年、A.O.C.制定と同時に認定。アンブレ、ブラン、リマージュ、トラディショナルといったタイプに分かれる。5年以上熟成させたものはオール・ダージュ表記可。ランシオ香が生じたものはランシオ表記も可)
- バニュルス・グラン・クリュ(V.D.N.赤。エリアはバニュルスと共通。品種構成や熟成規定が違う。グルナッシュ主体。5年以上熟成させたものはオール・ダージュ表記可。ランシオ香が生じたものはランシオ表記も可)
- リヴザルト(V.D.N.赤、V.D.N.白、V.D.N.ロゼ。ルーションのかなり広い地域に認められる。アンブレ、グルナ、ロゼ、テュイレといったタイプがある)
- ミュスカ ・ド・リヴザルト(V.D.N.白。A.O.C.リヴザルトと同一のエリアでミュスカから造られるV.D.N.のアペラシオン。新酒はミュスカ・ド・ノエルと付記可)
メモ
ルーション地方と酒精強化ワインは切ってもきれない関係ですので概要は押さえておきたいところです。
とは言えルーションは酒精強化ワインの産地だと思ってしまうと、ルーションのスティルワインの魅力に気づけなくなってしまうので注意が必要です。
ソムリエ試験対策の次の記事はこちら。
試験対策を終えたらこちらもどうぞ。