ヴァレ・ド・ラ・マルヌ〜Vallée de la Marne〜
エペルネの西側、マルヌ川に沿って東西に広がるシャンパーニュの主要産地の1つ、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ。
多くのぶどう栽培地が谷間で湿度が高く、病害にも強いピノムニエが多く栽培されています。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌの土壌
ヴァレ・ド・ラ・マルヌは地質年代はモンターニュ・ド・ランスやコート・デ・ブランと同じ白亜紀の土壌ですが、チョークの割合がかなり少なく粘土が多いです。それがモンターニュ・ド・ランスやコート・デ・ブランに比べて、かちっとしていない理由です(品種の問題もありますが)
ただアイやトゥール・シュル・マルヌの二つのグランクリュはチョークが強い土壌となっています。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌのぶどう品種
ヴァレ・ド・ラ・マルヌの主要品種はピノムニエです。グランクリュに関してはピノノワールが多く栽培されています。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌのグランクリュ
ヴァレ・ド・ラ・マルヌには、以下の2つのグランクリュがあります。
- アイ〜Ay〜
- トゥール・シュル・マルヌ〜Toirs-sur-Marne〜
アイ〜Ay〜
2つあるグランクリュの中でも特にアイは、上質なピノノワールが出来ることで有名で、ヴァレ・ド・ラ・マルヌの知名度自体は、モンターニュ・ド・ランスやコート・デ・ブランに劣りますが、アイはシャンパーニュの中でも1、2を争うくらい知名度の高い村です。
実際、アイのピノノワールのクオリティはシャンパーニュの中でもトップクラスです。格付け認定も早かった村です。
アイは南向きで日照量も豊富です。表土が薄くチョークが強い土壌です。形が整ってきれいな球体を描きます。密度が非常に詰まっていて、カチッとしています。遊びがなく、親密性はありません。非常にミネラリー。余韻も相当長いです。
もう一つのグランクリュ、トゥール・シュル・マルヌもピノノワールを多く栽培しています。トゥール・シュル・マルヌはモンターニュ・ド・ランスのグランクリュであるブジーなどから南下し、マルヌ川にぶつかるところに位置します。そこから川沿いに西に進むとアイです。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌのグランクリュは、モンターニュ・ド・ランスのグランクリュの延長にあるとも考えられますし、ぶどう品種もピノノワール主体なので、モンターニュ・ド・ランスのグランクリュと一緒に考えた方が良いという風に見ることも出来ます。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌのプルミエクリュ
ヴァレ・ド・ラ・マルヌには、10の村がプルミエクリュに認定されています。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌのプルミエクリュ一覧(10)
- マルイユ・シュール・アイ〜Mareuil-sur-Ay〜
- ビスイユ〜Bisseuil〜
- ディジィ〜Dizy〜
- アヴネイ・ヴァル・ドール〜Avenay-Val-d’Or〜
- シャンピヨン〜Champillon〜
- キュミエール〜Cumières〜
- オーヴィレール〜Hautvillers〜
- ミュティニー〜Mutigny〜
- ピエリィ〜Pierry〜
- ヴァレ・デ・マレ・コリニー〜Val-des-Marais-Coligny〜(黒ぶどうのみ)
プルミエクリュの村であるオーヴィレールは、ドン・ペリニヨンがいたオーヴィレール修道院があるところです。オーヴィレール修道院は650年に造られた歴史的な建造物。ドン・ペリニヨンは今のシャンパーニュにとっては当たり前な、基礎的な部分を確立した人物です。黒ぶどうから白ワインを造る方法や、ブレンドの方法などを造り上げました。
ルイ・ニケーズはほぼオーヴィレールのぶどうを使ったシャンパーニュを造ります。造り手のクレモンさんは以前、ジャックセロスで栽培、醸造を担当していた方です。シャルドネの比率が高いのが特徴です。
アイからもほど近いキュミエールは、シャンパーニュの中でも最も早くに収穫が始まる村です。ワインも温かい雰囲気です。
ルネ・ジョフロワはキュミエールの造り手で、ナチュールではありませんが普通に自然な栽培で好感が持てます。以前訪れたことがありますが、ルネ・ジョフロワ・エクスプレッシオン・ブリュットをその場でデゴルジュマンしてくれたワインは素晴らしいエネルギー感を持った味わいでした。
ルネ・ジョフロワはピノムニエを使ったスティルの赤ワインであるコトー・シャンプノワも造っています。多くのコトー・シャンプノワの赤ワインはピノノワールが多いと思いますので、ピノムニエ100%は少し珍しいスタイルかなと思います(なくはないですが)
マルイユ・シュール・アイも質が高い村で、フィリポナ単独所有のクロ・デ・ゴワセ(クロ・デ・ゴワス)〜Clos des Goisses〜があります。マルイユ・シュール・アイのワインはアイと似ています。
ヴァレ・ド・ラ・マルヌのピノムニエ
最高峰のピノノワールを生むアイがあるとは言え、やはりヴァレ・ド・ラ・マルヌで重要な品種はピノムニエです。
芯があり、まっすぐ硬質なシャンパーニュが生まれやすいピノノワールやシャルドネに対して、ピノムニエは少しざっくりして平たい広がり方をします。
地味な味わいですが、厚みや粘りがあり、シャルドネやピノノワールとは違った用途に使えます。
シャルドネやピノノワールは冷たい印象のものが多いですが、ピノムニエは比べると温かい印象を受けます。
下手な栽培をすると泥臭くなるピノムニエですが、きちんと造られたものは本当に美味しいです。
モンターニュ・ド・ランスのピノムニエはフルーティ、チャーミング方向ですが、ヴァレ・ド・ラ・マルヌはそういう方向もあるとはいえ、もっとどっしりしたタイプのワインを生みます。
プルミエクリュではありませんが、フェスティニーのピノムニエは上質です。泥灰岩土壌から生まれる、先の書いたようなどっしりしたヴァレ・ド・ラ・マルヌのピノムニエらしい味わいです。
クリストフ・ミニョンはフェスティニーの造り手でエクストラ・ブリュットはピノムニエ100%で、フェスティニーのムニエの魅力がしっかりと感じられます。ピノムニエ100%のロゼもとても良いです。ビオディナミです。
シャンパーニュ地方のワイン産地③、コート・デ・ブランの記事はこちらからどうぞ。