マルサネ〜Marsannay〜
コート・ドールの玄関口、ディジョンのすぐ南に位置するマルサネ。マルサネ・ラ・コート村と北部に隣接するシュノーヴ村、南部に隣接するクシェ村で造られたワインがA.O.C.マルサネを名乗れます。
A.O.C.マルサネに昇格したのは比較的新しく、1987年のことです(1965年にはブルゴーニュの後に村名を表記することはできた)
中世の頃のマルサネは今より評価が高く、ブルゴーニュ公が畑を所有してもいましたが、徐々に衰退し、近年はディジョンで飲まれる安ワインの産地となっていました。その頃はガメイが栽培されていて、今でもマルサネのロゼワインにはガメイが使われることがあります。
マルサネの土壌
マルサネは標高も300m程度と高く冷涼で石灰質が強いエリアです。そのため、抽出を強めにした赤ワインは、飲みにくいワインになりがちです。
白ワインは少し印象が違い、特に斜面下の石灰が少ないところのワインはソフトで柔らかい質感で使い勝手が良いです(ブルゴーニュ全体をみてもかなり使い勝手がいい)
マルサネのロゼワイン
マルサネはブルゴーニュの中で唯一、赤ワイン、白ワイン、ロゼワインが造れる地域で、実際、ロゼや軽く造った赤ワインが非常に美味しいです。ロゼワインを広めたのはドメーヌ・クレール・ダユ〜Domaine Clair-Daü〜で、1919年のことです。マルサネはロゼとそれ以外の畑が分かれています。
クレール・ダユはもう今はないドメーヌですが、ブリュノ・クレールに受け継がれています(相続問題は大変だったようですが‥)
マルサネの優良畑
マルサネにはグランクリュもプルミエクリュもありませんが、いくつかの優良畑が、プルミエクリュの申請を行っています。
- クロ・デュ・ロワ〜Clos du Roy〜
- レ・ロンジュロワ〜Les Longeroies〜
- レ・エシェゾー〜Les Echezeaux〜
- オー・シャン・サロモン〜Au Champ Salomon〜
- シャン・ペルドリ〜Champs Perdrix〜
などが代表的な畑です。
クロ・デュ・ロワ〜Clos du Roy〜
王の畑という意味のクロ・デュ・ロワは、シュノーヴ村の上部に位置します。東向きの急斜面で、砂混じりの粘土石灰質土壌です。
レ・ロンジュロワ〜Les Longeroies〜
マルサネ・ラ・コートにあるレ・ロンジュロワは、マルサネの優良畑の中でも特に評価の高い畑です。粘土が強く超熟でガッチリしたワインを産みます。レ・ロンジュロワの粘土質の土壌はシャルドネとの相性がよく、白ワインもオススメです(早飲みできます)
レ・エシェゾー〜Les Echezeaux〜
マルサネ・ラ・コートのレ・エシェゾーは谷に近い東向き斜面で、涼しい畑です。泥灰岩土壌で白に向く畑ですが、赤ワインもとても良いです。マルサネの畑の中では軽やかで滑らかで固すぎないワインを産みます。
シャン・ペルドリ〜Champs Perdrix〜
シャン・ペルドリはクシェ村の有名な畑です。クシェ村の南端の急斜面な畑で、標高350mです。砂質を含む粘土石灰質土壌。小さな砂利も多く水捌けの良い畑です。
マルサネの代表的な造り手
マルサネには
- ドメーヌ・ブリュノ・クレール〜Domaine Bruno Clair〜
- ドメーヌ・シルヴァン ・パタイユ〜Domaine Sylvain Pataille〜
- ドメーヌ・ジャン・フルニエ〜Domaine Jean Fournier〜
- シャトー・ド・マルサネ〜Château de Marsannay〜
といった代表的な造り手がいます。
ドメーヌ・ブリュノ・クレール〜Domaine Bruno Clair
ドメーヌ・ブリュノ・クレールはマルサネ・ロゼを広めたドメーヌ・クレール・ダユのジョゼフの孫、ブリュノのドメーヌです。クレール・ダユはジョゼフが亡くなった後、相続の問題などで消滅してしまいました。
ブリュノ・クレールは、クレール・ダユの畑を7割ほど引き継いでいます。ビオロジック栽培で、部分的に除梗することが多かったですが、現在は全房発酵するように変わってきています。
ジュヴレ・シャンベルタンのグランクリュ、シャンベルタン・クロ・ド ・ベーズを筆頭に、モレ・サン・ドニやアロース・コルトンにも畑を所有していますが、やはりマルサネを最初に飲みたいところです。マルサネロゼも良いですし、マルサネの赤も適切な抽出を行ったマルサネの良さを感じさせてくれるワインです。
ドメーヌ・シルヴァン ・パタイユ〜Domaine Sylvain Pataille〜
シルヴァン・パタイユは、もともとコンサルティングをしていたシルヴァンが2001年に立ち上げた新しいドメーヌです。最初は1haから始めた小さなドメーヌでしたが、現在は15haにまで拡大しています。
シルヴァン・パタイユのワインは、ナチュラルでシンプルな造りです。ビオディナミも行っています。本拠地マルサネの出来が良いですが、その下のブルゴーニュ・ルージュがお値打ちで質が高いです。ブルゴーニュ・ルージュ・シャピトルはシェノーヴの西、シャピトルの畑のぶどうを使用しています。なだらかな斜面ですが、畑の上部になると急斜面です。下部は泥灰岩、上部は石灰岩です。
軽やかで滑らかな上質な赤ワインです。赤ワインは基本、全房でゆっくり長めのマセラシオンを行っています。
シルヴァン・パタイユはロゼもやはり良くて、マルサネ・ロゼ・フルール・ド・ピノはフルーティかつボリューム感のある素晴らしいロゼです(ちょっと他の造り手のマルサネ・ロゼとは雰囲気が違います。
ドメーヌ・ジャン・フルニエ〜Domaine Jean Fournier〜
ジャン・フルニエはマルサネ最古の造り手と言われている中世からの歴史ある生産者です。そんな老舗中の老舗の造り手であるジャン・フルニエですが、ワインは個性的です。
マルサネ・ロゼにはピノノワールの他にシャルドネが入っていたり、マルサネ・ルージュ・レ・ロンジュロワにもピノノワールに加えてピノブーロが使われています。
アリゴテとブルゴーニュでは認められていないソーヴィニヨン・ブランをアッサンブラージュしたアリゴテ・エスなんていうワインもあります。
マルサネ・トロワ・テール・ヴィエイユ・ヴィーニュは、樹齢60年のピノ・ファンの古樹 3 区画をアッサンブラ ージュしたものですし、マルサネ・プティツト・グルモットは、ロンジュロワの中でミルランダージュが発生した房だけを使用したキュヴェです。
それらのワインはセパージュがユニークなだけではなく、きちんと完成された味わいなのがフルニエの魅力です。必要だから使っているというのが飲めばわかります。
ビオロジック栽培をしているのはもちろん、ぶどう木にストレスを与えないために仕立てを変えたり、グラヴィティシステムを導入してます。
長い歴史があるだけに良い区画もたくさん持っていて、かつ革新的なセパージュや造りをしているジャン・フルニエのワインはいつ飲んでも新たな発見があります。
シャトー・ド・マルサネ〜Château de Marsannay〜
2012年に資産家のオリヴィエ・アレイがオーナーになったシャトー・ド・マルサネ(シャトー・ド・ムルソーも所有)は、かなりの資金をつぎ込み、改革を行いました。
最新の設備を揃え、栽培はリュット・リゾネ。収穫スケジュールもしっかりと立てられ、以前の半分ほどの期間で素早く収穫することが可能となっています。今回紹介した造り手は全房発酵を行っているところばかりでしたが、シャトー・ド・マルサネは100%除硬です。全体的に洗練されたクリアな味わいのワインを造ります。
マルサネ・ブランは他の造り手もそうですが、厚みがあって穏やかで非常に使いやすいです。シャトー・ド・マルサネのブランは、複数区画を上手にブレンドしていて、複雑でフレッシュでクリーミーです。
マルサネの優良畑の項目で紹介したマルサネ・レ・ゼシェゾーのピノノワールもとても良いです。
こちらはコート・ド・ニュイのアペラシオン②〜フィサン〜の詳しい紹介です。