コート・デ・ブラン〜Côte des Blancs〜
コート・デ・ブランはエペルネの南に南北に伸びるワイン産地です。コート・デ・ブラン=白い丘、という名前の通り、真っ白なチョークの強い土壌で、良質なシャルドネを造ります(もちろんシャルドネ以外のぶどうもありますが、シャルドネの比率が大きいです)
コート・デ・ブランの土壌
コート・デ・ブランは強いチョーク土壌ですが、べレムナイトを多く含みます。べレムナイトは白亜紀の終わり頃に絶滅した軟体動物です。現在のコウイカに近いと言われています。その化石がコート・デ・ブランには多くあり、真っ白な土壌を形成します。
コート・デ・ブランのブラン・ド・ブラン
コート・デ・ブランの中でもシャルドネのみで造られるブラン・ド・ブラン(白ぶどうのみで造られたシャンパーニュ。ほぼシャルドネを指すが例外はあり)は、シャンパーニュの中でも特に細身でまっすぐかっちり、堂々とした味わいです。
酸とミネラルの強さ、質は他のシャンパーニュの追随を許しません。場合によっては強すぎるくらいで、厳しさを感じさせるキュヴェも見かけます。
ドワイヤールは1677年まで遡ることが出来る歴史あるコート・デ・ブランの造り手です。1992年からビオディナミです。アヴィーズ、クラマン、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェという4つのコート・デ・ブランのグランクリュを使用したブラン・ド・ブランは、まさにコート・デ・ブランを象徴するような味わいです。
コート・デ・ブランのグランクリュ
コート・デ・ブランにはグランクリュが6つあります。北から、シュイィ〜Chouilly〜、オワリー〜Oiry〜、クラマン〜Cramant〜、アヴィズ〜Avize〜、オジェ〜Oger〜、レ・メニル・シュル・オジェ〜Le Mesnil-sur-Oger〜です。
北から南に連なるように村はありますが(曲がりくねってはいますが)、オワリーのみシュイィの東側という外れた場所にあります。南側のグランクリュの方が概してどっしりしています。
もちろんシャルドネが主体ですが、黒ぶどうでも変わらずグランクリュを名乗れます(以前のシュイィは名乗れませんでした)
シュイィ〜Chouilly〜
シュイィはコート・デ・ブランの最も北に位置します。エペルネの近くです。しなやかで酸とミネラルは控えめです。繊細さ、フローラル、軽やかな味わいがシュイィの魅力です。サランの丘のぶどうがもっとも質が高いと言われていて、ほぼモエ・エ・シャンドン社が持っています。ドンペリニヨンに使われています。
ヴァザール・コカール・エクストラ・ブリュット82/13NVはチャーミングでスッキリ柔らかくシュイィらしい味わいです。1982年からのリザーブワインを使用したブラン・ド・ブランです(1982年〜2013年までのワイン使用)
オワリー〜Oiry〜
オワリーは、水捌けの良い土壌です。他のグランクリュと比べると少しこじんまりした印象。
クリストフ・マルタンはオワリー唯一のレコルタン・マニピュランだと思います。オワリー100%以外のキュヴェもありますので注意が必要です。単純な味わいだけ見るならオワリーは他のコート・デ・ブランのグランクリュに劣る印象ですが、これはこれで個性ある優れた味わいです。
クラマン〜Cramant〜
しなやか、柔らか、丸みがあるのがクラマン です。開放感、果実のニュアンスの強さが魅力です。
クラマンの人気の造り手、リルベールはスタンダードなキュヴェから全てグランクリュ使用ですが、そちらはクラマン、シュイィ、オワリーのブレンドです。ブラン・ド・ブラン・グランクリュ・クラマン・ミレジムはクラマン100%で、かつ1936年に植樹されたクラマン最上のブイッソン区画のぶどうが主体となっています。ブイッソン区画は表土は30cmしかなく、その下は厚いチョークの層です。日照量の多い区画ですが、南東向きで熟度とミネラル感がちょうど良いバランスに仕上がります。
紹介しているのは、クラマン 、シュイィ、オワリーのブレンドのブラン・ド・ブラン・グランクリュ ・ブリュットです。
クラマンでは軽いガス圧のシャンパーニュが造る伝統がありクレマン・ド・クラマンと呼ばれていました(クラマンだけの伝統)クレマン・ド・ブルゴーニュなどのクレマンは、ここから来ているとも言われています。
リルベールではその伝統のスタイルのシャンパーニュも造っています。現在はクレマンを名乗れないので、ブラン・ド・ブラン・グランクリュ・ブリュット・ペルルの名称でリリースしています(ガス圧の低い伝統のクラマンを造る造り手は3軒のみ)
通常のシャンパーニュが6気圧のところ、4気圧のペルルは柔らかくクリーミーで、クラマンの特徴を理解しやすいと共に食事にも合わせやすいスタイルとなっています。
アヴィズ〜Avize〜
アヴィズはべレムナイトを多く含む土壌で、太く強い酸、骨太な味わいです。。
アヴィズと言えばやはりジャック・セロスは外せませんね。色々なリューディーシリーズなどがありますが、ジャック・セロスを代表するキュヴェであるシュブスタンス・ブリュットNVはアヴィズのシャルドネを使ったブラン・ド・ブランです。アヴィズらしいかというと微妙なところですが(セロスの味としか言いようがない)、素晴らしいシャンパーニュなのは間違いないです。1984年のぶどうから入っているセロス独自のソレラを使ったワインです。
アグラパールもアヴィズの有名な造り手ですが、ジャック・セロスよりアヴィズらしいと思います。アヴィズのぶどうのみを使ったキュヴェは、アヴィゾワーズ・ブラン・ド・ブラン エキストラ・ブリュットです。
アヴィズ100%なのかは知りませんが、アグラパールは、エクスペリエンスが圧倒的なクオリティです。アヴィズ主体なのは間違い無いです。
シャンパーニュは糖分の添加を避けられないワインですが、通常、二次発酵時に加えるリキュールの代わりに翌年収穫したぶどうジュースを加えた、自社のぶどうのみから造られた革新的なシャンパーニュです(初めて造られた時は特にそう思いました)
オジェ〜Oger〜
オジェは優しい果実味があり、おおらかなシャンパーニュです。斜面が湾曲していて冷たい風から守られています。酸がまろやか。粘土が多くねっとり重めだけど柔らかい。
シャピュイは歴史あるオジェの造り手です。フランス革命時から、オジェでワインを造っている一族なんだそうです。オジェらしい豊かな果実味があって少し重めのテイストです。
ル・メニル・シュル・オジェ〜Le Mesnil-sur-Oger〜
ル・メニル・シュル・オジェは、表土が非常に薄く、べレムナイトの層が露出しています。ミネラル、シャープな強い酸。すっきりしつつ、かっちりメリハリ。南の方は粘土が多くねっとりしてくる。
ル・メニル・シュル・オジェのぶどうを使ったシャンパーニュとしては特にサロンが有名ですね。
パスカル・ドケはル・メニル・シュル・オジェの小さなレコルタン・マニピュランです。ビオロジックの畑から、ル・メニル・シュル・オジェらしいミネラル感溢れるシャンパーニュを造ります。
コート・デ・ブランのプルミエクリュ
コート・デ・ブランのプルミエクリュ(8)
- ベルジェール・レ・ヴェルテュ〜Bergere-les-Vertus〜
- マンシー〜Mancy〜
- キュイ〜Cuis〜
- エトレシィ〜Etrechy〜
- グローヴ〜Grauves〜
- ヴェルテュ〜Vertus〜
- ヴィルヌーヴ・ルネヴィル・シェヴィニー〜Villeneuve-Renneville-Chevigny〜
- ヴォワプルー〜Voipreux〜
エトレシィは白ぶどうのみがプルミエクリュです。どの村のぶどうも質は高いですが、中でもキュイやグローヴ、ヴェルテュは知られていて、大手メゾンのアッサンブラージュに頻繁につかわれます。
キュイの代表的な造り手はピエール・ジモネです。キレイで強すぎない酸が伸び、コクのあるキュイらしい味わいです(キュイはクラマンの西隣で日照量が多い地域です)
グローヴはオジェの隣ですが、オジェ同様粘土強めの土壌です。ピエール・カロはグローヴが本拠地ではありませんが(アヴィズが本拠地)、グローヴ100%のシャンパーニュをリリースしています(100%ではなくグランクリュも入っているかもしれませんがグローヴっぽいです)
アヴィズの他にグランクリュのクラマン、シュイィの畑も所有していて、当然グランクリュのワインも良いとはいえ、グローヴを使用したディヴェルシテ・プルミエクリュ・グローヴ・レゼルヴ・ブリュットもとてもオススメです。
ヴェルテュも粘土が強い土壌で安定したどっしりした味わいです。ラルマンディエ・ベルニエはヴェルテュが本拠地の造り手で、テール・ド・ヴェルテュ ・ノンドゼ・プルミエクリュはヴェルテュの斜面中央部にある最も良いと言われる区画から収穫されたシャルドネから造られたワインです。
ラルマンディエ・ベルニエはビオディナミを行なっています。シャンパーニュではまだ少数派の自然酵母のみの使用や、アンフォラなども実験的に使っている造り手でもあります。
シャンパーニュ地方のワイン産地④、コート・セザンヌの記事はこちらからどうぞ。