コート・デュ・ローヌ〜Côtes du Rhône〜

シャトーヌフ・デュ・パプのワインの特徴

シャトーヌフ・デュ・パプ〜Chateauneuf du Pape〜

ローヌシャトーヌフデュパプ

南ローヌで最も有名なアペラシオンであるシャトーヌフ・デュ・パプ。

「教皇の新しい城」という意味で、14cに教皇庁がローマからアヴィニョンに移され(アヴィニョン捕囚)、教皇に選ばれたヨハネス22世はアヴィニョンの北に位置する場所に別荘(要塞?)を作り、ワイン造りも奨励しました。

その場所が現在のシャトーヌフ・デュ・パプです。

シャトーヌフ・デュ・パプのぶどう品種

シャトーヌフ・デュ・パプはフランスのアペラシオンの中でも特に多い13品種のぶどうを使用することが出来ます(正確には同品種のロゼなどを含めて18品種)13品種使用する造り手もいますし、数種類、またグルナッシュ単一など、多様です。

認可品種は、黒ぶどうが

  • グルナッシュ・ノワール
  • シラー
  • ムールヴェードル
  • テレ・ノワール
  • ヴァカレーズ(ブラン・アルジャンテ)
  • サンソー
  • ミュスカルダン
  • クノワーズ
  • ピクプール・ノワール

白ぶどうは、

  • グルナッシュ・ブラン
  • ピクプール ・ブラン
  • ピカルダン
  • クレーレット・ブランシュ
  • ルーサンヌ
  • ブールブーラン

ロゼあるいはグリは、

  • グルナッシュ・グリ
  • ピクプール・グリ
  • クレーレット・ロゼ

以上で全18品種です。グルナッシュとピクプールはノワールとブラン、グリがそれぞれ認められています。クレーレットはブランシュとロゼがあります。

シャトーヌフ・デュ・パプは赤ワインと白ワインどちらも認められていますが、品種規定は赤白共通です。なので黒ぶどうのみでシャトーヌフ・デュ・パプ・ブランを造ることも可能です。割合などの規定もありません。ですが多くの造り手が赤ワインはグルナッシュ主体、白ワインもグルナッシュブランを主体としたワインとなっています。

シャトーヌフ・デュ・パプの土壌

ローヌシャトーヌフデュパプ

シャトーヌフ・デュ・パプのエリアは地中海性気候で乾燥し、ミストラルが吹き付けることで病害の被害を受けにくいエリアです。

シャトーヌフ・デュ・パプはガレ・ルーレという大きな丸い石が畑にたくさんあることでも有名ですが、ガレ・ルーレがあるのは北西部から南東部にかけてのエリアに多く、他にも石灰岩、砂、場所によっては砂岩もあります。

ガレ・ルーレは石英の多い珪岩で出来ていて、ボリュームのあるワインが生まれます。ガレ・ルーレは第四紀カラブリアンのヴィラフランシアン紀(360〜78万年前)に堆積したものです。

石灰岩はかっちり、砂質はしなやかなワインを生みます。石灰岩はまた違う地質で三畳紀のものですが、この辺りの地質ではなく、これもまた川によって運ばれてきたものです。

もともとのシャトーヌフ・デュ・パプのエリアはガレ・ルーレのない北側から始まったそうですが、フランスの色んな畑をみてもガレ・ルーレで覆われたシャトーヌフ・デュ・パプの畑ほど、インパクトの強いものはなく、知っていても実際に訪れてみると驚かされます。

よくここにぶどうを植えたものだと感心してしまいます。

シャトーヌフ・デュ・パプの味わい

土壌と品種により多様なスタイルを生み出すシャトーヌフ・デュ・パプですが、全体的にはさらっと品が良く、それでいて非常に複雑な香味と味わいを備えたワインです。この複雑さと余韻の長さはフランスのワインの中でもトップクラスだと思います。

一昔前は非常に濃厚なタイプが多く、現在でもシャトーヌフ・デュ・パプを濃く重いワインだと認識している人も割といるように思いますが、それはシャトーヌフ・デュ・パプに限らず、抽出の強いワインが世界的に流行っていたためであり、産地の味わいとはズレがあります。

シャトーヌフ ・デュ・パプの代表的な造り手

シャトー・ド・ボーカステルはシャトーヌフ・デュ・パプの最も人気のある造り手の一人です。シャトーヌフ・デュ・パプの北端のエリアの生産者です(畑はいくつかあるようですが)

プロヴァンスアヴィニョン ボーカステルシャトーヌフデュパプ00

ボーカステル家がルイ14世から譲り受けた土地で300年以上の歴史があります(現在はペラン家が所有)第三紀の砂岩。石灰質、粘土、砂質もあります。ナチュラルな栽培です。ビオディナミも取り入れています。

シャトー・ド・ボーカステルのシャトーヌフ・デュ・パプは13品種使っているのが特徴です(正確な品種が書いてないのでもしかしたら18品種なのかもしれません)ぶどうの平均樹齢は65年と古く、中には100年越えのムールヴェードルもあります。

このシャトーヌフ・デュ・パプ・エノテークはボーカステルのカーヴで熟成させたワインを飲み頃になってからリリースするシリーズです。

シャトー・ラヤスも超有名なシャトーヌフ・デュ・パプの造り手です。コート・デュ・ローヌの中でも最も偉大な方と言って良い故ジャック・レイノー氏が名声を築きあげました(1997年に亡くなりました)

ローヌシャトーヌフデュパプ08ラヤス

ジャック・レイノーさんが亡くなってから一時期品質が落ちたと言われていましたが、現在は素晴らしい品質のワインを造っています。

シャトー・ラヤスの畑も大きな石、ガレルーレがゴロゴロしていましたが、それをジャック・レイノーさんは取り除いています。しかも北向き斜面で、シャトーヌフ・デュ・パプの中でも特に冷涼です。遅摘みでゆっくり完熟したぶどうを使って、他にはないラヤスならではの味わいを造り上げています。

シャトー・ラヤスもシャトーヌフ・デュ・パプ北部の造り手です。土壌は赤みがかった砂質の区画、砂質ですが地中には粘土がある区画、ガレルーレを取り除いたと書きましたが、小石が多い区画もあります。基本北東向き斜面。森に囲まれた畑(ぶどう畑以外の部分が自然で溢れている)

シャトー・ラヤスのシャトーヌフ・デュ・パプの特徴はグルナッシュ100%ということです。先に紹介したボーカステルと真逆ですね。冷涼なクリマから繊細で奥行きのあるワインを造ります(ブルゴーニュに似ていると言われたりもしますが、似ている部分もありますがやはり違う方向だと思います)

シャトー・ラヤスは優しく繊細で色気を感じさせる他にはないワインです。シャトーヌフ・デュ・パプの中でも異質ですね。蔵はカビなどが多く、樽も相当古いものを使っているようですが、味わいにはラヤスの畑(周辺)の自然環境や蔵付きの酵母の力が相当関わっているのだと思います。

シャトーヌフ・デュ・パプでもう一人名前を挙げるとしたらやはりアンリ・ボノーでしょうか。シャトーヌフ・デュ・パプで最も優れた畑と言われるラ・クルー〜La Crau〜を所有しています。アンリ・ボノーさんも2016年に亡くなってしまいました。5haという小さな畑から素晴らしいワインを生みます。スタンダードなシャトーヌフ・デュ・パプと、マリー・ブーリエ、レゼルヴ・デ・セレスタンという3種類のワインを造りますが、別に醸造しているわけではなく瓶詰め時に分けるという面白い方法を取っています。

2015年がアンリ・ボノーさんが仕込んだ最後のヴィンテージです。過去最高の出来だそう。飲んでみたいものです。

ドメーヌ・デュ・ヴィユー・テレグラフもラ・クルーを所有する生産者です。トップキュヴェのシャトーヌフ・デュ・パプ・ラ・クルー・ルージュはそのままラ・クルーがキュヴェ名になっています(ラ・クラウって紹介されている方が多いですね)

ローヌ シャトーヌフデュパプ テレグラフ

ドメーヌ・デュ・ぺゴーも忘れてはいけません。トップキュヴェのシャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポはさすがのクオリティです。

最上区画と言われるラ・クルーを開墾した造り手はクロ・サン・ジャンです。ラ・クルーの最大所有者でもあります(開墾当初に植えられた樹齢100年越えのグルナッシュもあります)クロ・サン・ジャンのシャトーヌフ・デュ・パプは主体となるグルナッシュは全てラ・クルーのものです(他の品種は別の区画を使う場合と使わない場合がある)

シャトーヌフ16クロサンジャン

そして何よりすごいのが値段の安さですね。ラ・クルー区画のワインが6千円程度で買えるのは凄いことですね。

クロ・サン・ジャンはシャトーヌフ・デュ・パプ・ブランもとても良いです。白もラ・クルーです。ラ・クルーの標高の高い区画のグルナッシュ・ブラン、クレレット、ルーサンヌ、ブールブランの等分です。

クロ・サン・ジャン以外のシャトーヌフ・デュ・パプは非常に高価なものばかり紹介しましたが、トップ生産者のシャトーヌフ・デュ・パプは本当に素晴らしく触れないわけには行きませんでした。ですがシャトーヌフ・デュ・パプの魅力の1つは品質の高さに対して価格がお手頃だという点があります。紹介した一部の生産者以外のワインは、かなりお手頃です。

ドメーヌ・ド・フェランのシャトーヌフ・デュ・パプは樽を使わないユニークなヌフです。

ローヌフェランシャトーヌフデュパプ17

セメントタンクでの発酵です。畑はヌフの街の南側や北東側にいくつかの区画があり、様々な土壌のぶどうをブレンドしています。樽を使わないからこそのフレッシュさ、果実の味わいがダイレクトに感じられます。

マス・ド・ボワローゾンはグルナッシュ主体にムールヴェードルをブレンドしたシャトーヌフ・デュ・パプです。品種がかなり自由なシャトーヌフ・デュ・パプですが、赤だとグルナッシュ100%以外のワインは基本的にシラーが入るものばかりです。マス・ド・ボワローゾンは珍しいシラーなしのグルナッシュ100%ではないワインです。


コート・デュ・ローヌ地方のワイン産地⑨、ジゴンダスの記事はこちらからどうぞ。

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