リムー〜Limoux〜
リムーは、カルカッソンヌの南に位置し、41の村に認められているアペラシオンです。ピレネー山脈とコルビエール山脈に囲まれた標高の高いエリアで、ラングドックの中では冷涼な気候です。
現在のリムーはシャルドネやピノノワールを使用したワインが人気の産地となっています。
リムーの土壌
リムーの土壌は軽めで表土が厚く、小石が多い粘土石灰質です。リムー南部、ピレネーに近く標高の高いオート・ヴァレ地区になると石灰がより強くなります。オート・ヴァレは他の地域より湿度もあります。
リムーの中心部はオータン地区です。石灰と砂利、ローム。暑く乾燥しています。
リムーの東側はメディテラネアン地区です。最も暑く乾燥しているエリア。粘土石灰質、砂利、ローム。黒ぶどうの比率が高いエリアです。渇水ストレスが多い。
西のエリアはオセニック地区です。砂岩、粘土石灰、砂利。温暖で最も湿度が高いエリア。地下にも水が溜まりストレスがありません。
シュール・ダルクが造るトック・エ・クロシェというラインで、この4つのエリアそれぞれのシャルドネを使って同じ造り方で4種類の白ワインを作っています。リムーの地区ごとの味の違いを覚えるためにはこれ以上ない教材です。
全て飲み比べるのが楽しいところですが、紹介するのはオータンのものです。
リムー〜最古の発泡性ワイン〜
リムーは発泡性ワインが誕生した場所と言われています。1531年にサン・ティレール修道院で、ボトル内のワインが再発酵したのを修道士が偶然見つけたとされています。
リムーの発泡性ワインは、リムー・メトード・アンセストラル〜Limoux méthode ancestrale〜、リムー・ブランケット・ド・リムー〜Limoux Blanquette de Limoux〜、クレマン・ド・リムー〜Crémant de Limoux〜の3種類があります。
リムー・メトード・アンセストラルと、リムー・ブランケット・ド・リムーはA.O.C.リムーですが、補助的にラベルに記載が出来ます。この2つがリムーの伝統であり、最も重要なワインです。メトード・アンセストラルはモーザック100%、ブランケット・ド・リムーはモーザック主体の発泡性ワインです。
シャトー・アントニャックのブランケット・ド・リムーはモーザックの良さがしっかりと感じられる良いワインです。
クレマン・ド・リムーは別のアペラシオンで、シャルドネやシュナンブランを使ったクレマンです(モーザックも使えます)
全体的には穏やかで落ち着いた味わいの泡です。
リムーのぶどう品種
リムーは上記の発泡性ワインから始まったワイン産地ですが、現在のA.O.C.リムーは白ワイン、赤ワインも認められています。
リムーで白ワインが認められたのは1993年で、もともとはモーザックのみの規定でしたが、後にシャルドネとシュナンブランも認められました。上記に書いた通り、伝統的なメトード・アンセストラルとブランケット・ド・リムーはモーザックのワインです。
リムーの白ワインの基幹品種はモーザックだと思います。スパークリングワインもシャルドネとシュナンブランが多く入ったクレマン・ド・リムーより、ブランケット・ド・リムーの方がリムーらしい味わいです(なので先ほど紹介したスパークリングはブランケット・ド・リムー)
とは言え現在のリムーといえばシャルドネを使用した白ワインがもっとも有名だと思います。南国的なニュアンスのある、肉厚なシャルドネです。標高が高いエリア(オート・ヴァレ)の石灰岩の多い区画のものは、より引き締まった印象を受けます。ラングドックはシャルドネには少し暑すぎる感もあるので、冷涼なオート・ヴァレがシャルドネには丁度良い気候です。
フランスでブルゴーニュ以外の上質なシャルドネを探す場合、リムーは最有力候補と言えます。品質的にはリムーのシャルドネのレベルは高いですが、やはり基本はモーザックだとは思います。モーザックを押さえた上でシャルドネに手を伸ばすのが良いかなと思います(全然ないけれど)
ブランケット・ド・リムーを紹介したシャトー・アントニャックのリムー・ブラン・ペイルジャックは、モーザックは15%で残りはシャルドネではありますが、これでも他のワインよりモーザックの比率が多いです(モーザックの割合の方が多いものを紹介したいところです)リムー・ブラン・ペイルジャックはそれでもモーザックらしさ、リムーらしさを感じられる良いワインです(単純な品質では同じシャルドネ100%のラス・グラヴァスの方が良い気はします)
リムーの赤ワイン
リムーの赤ワインの認定は2004年です。メルロが主体で、補助品種がコット、グルナッシュ、シラーです。カベルネソーヴィニヨンとカベルネフランも使用可能です。
リムーはカバルデスやマルペールとほど近く、やはり赤ワインはボルドーブレンドとなっています。
ボルドーブレンドの赤ワインは、カバルデスやマルペールより厚みがあってがっちりしています(硬いわけではなく、密度がある)オート・ヴァレのワインになると引き締まって冷涼なニュアンスも出てきます。
ドメーヌ・バロナークはムートン・ロートシルトやオーパス・ワンでおなじみのバロン・フィリップ・ドゥ・ロートシルトがリムーに持つワイナリーです。赤ワインのレベルが高く、バロナークの赤ワインの功績が認められてリムールージュが認可された側面もあります。ラ・キャピテール・ド・バロナークはセカンドワインですが、十分なクオリティです。メルロ、マルベック、シラー、グルナッシュのセパージュです。
標高の高い場所で造ったボルドー品種のワインは、ボルドーではなかなか見つけられないので、リムーやカバルデス、マルペールの赤ワインは貴重です。
ですが、リムーの赤ワインで人気なのはA.O.C.ではなくI.G.P.のピノノワールです。ボルドーブレンドのリムーはほとんど見かけませんが、ピノノワールはよく見かけます。
シャルドネとピノノワールが人気という不思議な産地がリムーです。
南仏の品種やボルドー品種、さらに北のブルゴーニュ品種など(ロワールのシュナンブランも)、様々な地域のぶどうが栽培されているリムーですので、ぶどうが植えられている場所はしっかりと確認しないといけません。
ラングドック地方のワイン産地⑧、フィトゥーの記事はこちらからどうぞ。