ピノノワール〜Pinot noir〜
銘醸地ブルゴーニュを代表する黒ぶどう品種であり、もっとも高貴な品種と崇められるピノノワール。
ピノノワールもまたブルゴーニュとそれ以外の地域では結構性格が異なります。
特にフランス以外では顕著ですが、おおらかで凄みなどはないワインを生みます。厚みがあって明るくて果実味がたっぷりというようなワインが新世界には多いと思います。
フランス、とりわけブルゴーニュだけがピノノワールの違った側面を見せてくれます(地域名は別。石灰岩土壌のピノノワール)
なのでブルゴーニュはピノノワールではなく、ブルゴーニュという一つのジャンルとして認識する必要があります。
ピノノワールはブルゴーニュの気候や土壌と合わさることで、偉大さを感じさせるぶどう品種になったわけです。
ブルゴーニュだけが違うということは、ピノノワールの個性を考えると、飲みやすく柔らかいふんわりとしたぶどう品種という方が正しい気さえしますが、ブルゴーニュがピノノワールの基本の味として考えられています(そのため違った個性の他産地のピノノワールが低く見られがちです)
ブルゴーニュのピノノワールは少し近寄りがたい味がします(フランスの全産地の中でももっとも距離感を感じる味)
高貴で飲み手よりワインの方が上位にあり、敬わなければならない感覚に陥ります。
フランスワインは(というかヨーロッパは)基本的にキリスト教の思想が宿るワインだと思いますが、ブルゴーニュのピノノワールはとりわけそれが顕著です。厳かな雰囲気。
特にシトー派由来の畑にその傾向は強いです。加えて全体としてジュラ紀の石灰岩で、土壌からは勢いと明るさが付与されます。
キリスト教的味わいと、土壌の特性が合わさったのがブルゴーニュだと思います。どちらが強く作用しているかで印象は変わります。
ブルゴーニュと同様、ピノノワールがかなり重要となっている産地にシャンパーニュがあります。シャンパーニュは白亜紀のチョークが強く、カチッとした骨格の強さのあるワインが生まれますが、シャルドネ単体のものと比べてピノノワールが入っているシャンパーニュは、厚みが出て果実のニュアンスも強く感じます。
フランスの他の産地のピノノワールになるともう少しとっつきやすい性格になります。ピノノワールを見かけるのはアルザス、ロワールのサンセール、ラングドックのリムーでしょうか?
基本、石灰岩土壌で固さはありますが、どこかフレンドリーで実態感の強い印象を受けます。
アルザスにはブルゴーニュと同じジュラ紀石灰岩のピノノワールもありますが、ブルゴーニュほど複雑性がなくシンプルな印象です(クローンなどが違うのだとは思います)クリアさやピュアさは少なく、土っぽさが感じられます。
サンセールのピノノワールは冷涼感があってミネラリーですが、ふんわり感もあります。
ブルゴーニュのピノノワールはもちろん素晴らしいですが、それはピノノワールの一面でしかありません。他産地のピノノワールの良さが理解できるようになると、よりブルゴーニュの特異性が見えてくると思います。