シャブリ〜Chablis〜
シャブリはフランスワインの中でも特に知名度が高いワインです。ブルゴーニュ最北の産地で、冷涼なエリアですから、さっぱりすっきりのワインができそうですが少し違います。
シャブリはシャブリの村を中心に20の村に認められているアペラシオンです。シャルドネを使用した白ワインのみのアペラシオンです。
シャブリのアペラシオン
シャブリ地方では4つのアペラシオンに分かれています。格付けの高い順に、
- シャブリ・グランクリュ(特級) 〜Chablis Grand Cru〜
- シャブリ・プルミエクリュ(1級.1er) 〜Chablis Premier Cru〜
- シャブリ(村名) 〜Chablis〜
- プティ・シャブリ 〜Petit Chablis〜
と分かれています。生産量の7割弱が村名シャブリで、シャブリ・グランクリュは全体の2%程度しか生産されていません。
パフォーマンスが高いシャブリ村名
シャブリは村名クラスから斜面の区画が多いのが特徴です。コートドール村名は平地が多く抜けが悪い味になりがちですが、シャブリはグランクリュだけではなく村名から斜面です(1erの上部に多い)
そして土壌はキンメリジャンマール。牡蠣などの化石がゴロゴロとある粘土の強い土壌で、硬く重く引き締めった味わいです(スッキリしたワインというイメージが強いですが土壌は重いですし、飲むと結構粘りがあります)
ただ、メンソールぽい清涼感のある香りがシャブリにはあります。それがすっきりしたワインだと思われている要因だと思います(火打ち石的なニュアンスや酸の強さも。実際はそれらとすっきりしているかは別の話)
キンメリジャンはジュラ紀後期、約一億五千万年前の地層で、ジュラ紀中期のバジョシアンやバトニアンが多いコートドールとはずいぶんと印象が違います。
コートドールのシャルドネの方が(地域名や村名)、リッチで果実味があり柔らかいです。
シャブリは牡蠣の化石があることなどから牡蠣や魚介に合うと言われていますが、合うものは限られています。キンメリジャンマールは牡蠣に対して固すぎるからです。
シャブリというと一昔前に流行った印象で、シャブリはもういらないという方も多いですが、古臭い味わいのワインではありません。流行りすぎてしまったが故の弊害ですね。
たしかに昔のシャブリは質の悪いものも多く、そのイメージを引きずってしまっている場合、嫌煙してしまうにもわかりますが、現代のシャブリは一昔前のシャブリとは随分と違います。温暖化の影響か、酸が強すぎるということもなく、造りも随分とナチュラルなものになっています。
村名も1erもグランクリュも同じくキンメリジャンマールで斜面なので、村名が非常にお買い得でお勧めだったりします(もちろん、標高や斜度、斜面の向き、粘土の強さなどは違います)
現在のシャブリはナチュラルな造り手も増えてきています。有名なウィリアム・フェーブルもそうで、ビオディナミも取り入れながらワインを造っています。一昔前の味わいとは随分と違った印象を受けます。シャブリの標準のような味わいです。
他にもジャン・マルク・ブロカールやモローノーデがナチュラルでかつ素晴らしい味わいのシャブリを造っています。
プティ・シャブリ 〜Petit Chablis〜
シャブリのエリアの中でもっとも気軽なアペラシオンがプティ・シャブリです。プティ・シャブリは、シャブリの他のアペラシオンと地質年代が違い、ポートランディアンです。ポートランディアンはチトニアンともいい、キンメリジャンより新しい地層です(同じくジュラ紀後期)
プティシャブリは地質年代がシャブリと違うだけではなく粘土の少ない石灰岩というのも特徴です。昔のシャブリのイメージのスッキリとして抜けのいいワインを求めるならプティシャブリです。
シャブリのアペラシオンのエリアは、もともとはキンメリジャンのみでしたが、拡大して今は一部ポートランディアンのところもあります。とは言え基本的に地質年代でシャブリとプティ・シャブリは分かれています。シャブリのエリアの地層は入り組んでいて、グランクリュはひとまとまりのエリアになっていますが、シャブリ、シャブリ・プルミエクリュ、プティ・シャブリのエリアはかなりバラバラに入り組んでいます。
シャブリ・グランクリュ〜Chablis Grand Cru〜
村名から質が高いシャブリですが、グランクリュの畑は日当たりの良い南向きの区画となり、より熟したフルーツのフレーバーが強まります。
グランクリュはスラン川の右岸の丘に7つあり西から、
- ブーグロ〜Bougros〜
- レ・プリューズ〜Les preuses〜
- ヴォーデジール〜Vaudesir〜
- グルヌイユ〜Grenouilles〜
- ヴァルミュール〜Valmur〜
- レ・クロ 〜Les clos〜
- ブランショ〜Blanchot〜
と並んでいます。加えてムートンヌ(ムトンヌ)というヴォーデジールとレ・プリューズに入り込んでいる畑も特別にグランクリュの名称の使用が認められています(ロンデパキのモノポール)
シャブリ・グランクリュは二つの丘が並んだ形をしていて、ブーグロ、レ・プリューズ、ヴォーデジールが同じ丘にあり、間にグルヌイユを挟んでもう一つの丘にヴァルミュール、レ・クロ、ブランショがあります。
ブーグロ〜Bougros〜
ブーグロは風の抜ける場所ですずしい印象です。表土に厚みがあり、粘土多め。リッチでボリューム感があるワインが生まれます。ウィリアムフェーブルがリリースしているコート・ブーグロは、通常のブーグロと異なり、表土が浅く色が濃い。より凝縮度の高い味。
レ・プリューズ〜Les preuses〜
レ・プリューズは、丸みがありグランクリュの中ではライトな性格です。
ヴォーデジール〜Vaudesir〜
ヴォーデジールは、日当たりがよく夏はかなり暑くなり、風の抜けも良くない畑。そのため熟度の高いぶどうが出来ます。
グルヌイユ〜Grenouilles〜
グルヌイユはグランクリュ最小のクリマです。連なっている一連のグランクリュの中心に位置します。南西向き斜面の下部、粘土強い土壌。畑のすぐ下にスラン川が流れていてそこからカエルの鳴き声が聞こえてくるため、カエル=グルヌイユという名前になったと言われています。ほとんどの畑を協同組合であるシャブリジェンヌが所有していて、フラッグシップのワインとなっています。
ヴァルミュール〜Valmur〜
ヴァルミュールは、まっすぐ芯のあるワインが生まれます。強い骨格。ミネラルをしっかりと感じます。
レ・クロ〜Les clos〜
レ・クロは、グランクリュの中で最大の広さです。礫が多い畑。大きく力強いワインが生まれます。
ドメーヌ・ルイ・モローが単独所有する区画、クロ・デ・ゾスピスはレ・クロの中でも特に良い区画と言われています。
ブランショ〜Blanchot〜
ブランショは丘の東端。東向きの急斜面でグランクリュの中では冷涼な畑です。谷間を抜ける風の影響も受け繊細で軽やか。母岩も風化が進んで柔らかい。他のグランクリュと毛色が違う印象。
シャブリ・プルミエクリュ〜Chablis Premier Cru〜
プルミエクリュは41ありますが、17のグループに分けられています。さらに細かく79のリューディに分かれますが、そこまで把握するのは難しいですし現実的ではない気がします。
プルミエクリュはスラン川の右岸、左岸のどちらにも点在しています。全般的に右岸は粘土が多く重め、左岸は北向き斜面なども多く少し軽めの場合が多いです。
通常のシャブリでも質が高いので見過ごしがちなプルミエクリュですが(みんな飛び越えてグランクリュ にいく印象)、理解していくと非常に面白い世界だと思います。いくつかの畑はグランクリュ 以上に魅力あるワインを生み出しているように感じます。
17の代表的なプルミエクリュのグループは、
- モン・ド・ミリュー
- モンテ・ド・トネル
- コート・ド・ヴォーバルース
- ベルディオ
- フルショーム
- レ・フルノー
- ヴォークパン
- モンマン
- ヴァイヨン
- コート・ド・レシェ
- ボーロワ
- ヴォグロ
- ショーム・ド・タルヴァ
- コート・ド・ジュアン
- レ・ボール・ガール
- ヴォー・ド・ヴェイ
- ヴォー・リニョー
です。
同じグループの畑はその畑名を名乗る事も出来ますし、代表的な17の畑名を名乗る事も出来ます。基本的に17の代表的な畑名が使われることが多いです。なのでこの17のクリュを少しづつ把握していけば良いと思います(代表的なクリュ名を名乗れる事もあり、シャブリ・プルミエクリュは畑ごとの特徴が把握しづらいです)
シャブリ・プルミエクリュ(41)
- モン・ド・ミリュー〜Mont de Milieu〜(右岸、モン・ド・ミリューのグループ)
- ヴァレ・ド・シゴ〜 Vallée de Chigot〜(右岸、モン・ド・ミリューのグループ)
- モンテ・ド・トネル〜Montée de Tonnerre〜(右岸。モンテ・ド・トネルのグループ)
- シャプロ〜Chapelot〜(右岸。モンテ・ド・トネルのグループ)
- ピエ・ダルー〜Pied d’Aloup〜(右岸。モンテ・ド・トネルのグループ)
- コート・ド・ブレシャン〜Côte de Bréchain〜(右岸。モンテ・ド・トネルのグループ)
- コート・ド・ヴォーバルース〜Côte de Vaubarousse〜(右岸、単独)
- ベルディオ〜Berdiot〜(右岸、単独)
- フルショーム〜Fourchaume〜(右岸、フルショームのグループ)
- ヴォーピュラン〜Vaupulent〜(右岸、フルショームのグループ)
- コート・ド・フォントネイ〜Côte de Fontenay〜(右岸、フルショームのグループ)
- ロム・モール〜L’Homme Mort〜(右岸、フルショームのグループ)
- ヴォーロラン〜Vaulorent〜(右岸、フルショームのグループ)
- レ・フルノー〜Les Fourneaux〜(右岸、レ・フルノーのグループ)
- モレン〜Morein〜(右岸、レ・フルノーのグループ)
- コート・デ・プレ・ジロ〜Côte des Prés-Girots〜(右岸、レ・フルノーのグループ)
- ヴォークパン〜Vaucoupin〜(右岸、単独)
- モンマン〜Montmains〜(左岸、モンマンのグループ)
- レ・フォレ〜Les Forêts〜(左岸、モンマンのグループ)
- ビュトー〜Butteaux(左岸、モンマンのグループ)
- ヴァイヨン〜Vaillons〜(左岸、ヴァイヨンのグループ)
- レ・リス〜Les Lys〜(左岸、ヴァイヨンのグループ)
- セシェ〜Sécher〜(左岸、ヴァイヨンのグループ)
- レ・ゼピノット〜Les Epinottes〜(左岸、ヴァイヨンのグループ)
- シャタン〜Chatains〜(左岸、ヴァイヨンのグループ)
- ロンシェール〜Roncières〜(左岸、ヴァイヨンのグループ)
- ブニョン〜Beugnons〜(左岸、ヴァイヨンのグループ)
- メリノ〜Mélinots〜(左岸、ヴァイヨンのグループ)
- コート・ド・レシェ(コート・ド・ルシェ)〜Côte de Léchet〜(左岸、単独)
- ボーロワ〜Beauroy〜(左岸、ボーロワのグループ)
- コート・ド・サヴァン〜Côte de Savant〜(左岸、ボーロワのグループ)
- トレスメ〜Troesmes〜(左岸、ボーロワのグループ)
- ヴォグロ〜Vosgros〜(左岸、ヴォグロのグループ)
- ヴォージロ〜Vaugiraut〜(左岸、ヴォグロのグループ)
- ショーム・ド・タルヴァ〜Chaume de Talvat〜(左岸、単独)
- コート・ド・ジュアン〜Côte de Jouan〜(左岸、単独)
- レ・ボールガール〜Les Beauregards〜(左岸、レ・ボールガールのグループ)
- コート・ド・キュイシー〜Côte de Cuissy〜(左岸、レ・ボールガールのグループ)
- ヴォー・ド・ヴェイ〜Vau de Vey〜(左岸、ヴォー・ド・ヴェイのグループ)
- ヴォー・ラゴン〜Vaux Ragons〜(左岸、ヴォー・ド・ヴェイのグループ)
- ヴォー・リニョー〜Vau Ligneau〜(左岸、単独)
モン・ド・ミリュー〜Mont de Milieu〜
モン・ド・ミリューは、シャブリ村北東にある小さな村のフィエと隣のフレイ村に跨るプルミエクリュです。シャブリ・グランクリュ群の東側に位置します。モン・ド・ミリューはフローラルでフルーティ、適度な厚みがあり、軽やかで広がりがあります。非常にミネラリーで品格が感じられる畑です。
モンテ・ド・トネル〜Montée de Tonnerre〜
モンテ・ド・トネルは、シャブリ・グランクリュ群と、モン・ド・ミリューの間に位置します。モンテ・ド・トネルは、落ち着いていて重めです。
フルショーム〜Fourchaume〜
グランクリュのレ・プリューズの北側に隣接したヴォーロランの畑から、ぶどう畑のないエリアを挟み、さらに北西方向にまっすぐ伸びる長い畑がフルショームです。シャブリのプルミエクリュの中でも最も北側に位置します。シャブリの村からラ・シャペル・ヴォーペルティーニュ村を超えてマリニィ村の近くまで畑は伸びています。
全体的にフルショームはふっくらふくよかです。
ヴォーロランもフルショームを名乗れるクリュですが、飛び地で結構印象が違います。ですがヴォーロラン自体の評価が高いのでヴォーロランの名前でリリースされることが多いように思います。
モンマン〜Montmains〜
モンマンはシャブリの村を挟んで、シャブリ・グランクリュ群の反対側に位置します。モンマンは厚みがあってゆっくり穏やかです。
ヴァイヨン〜Vaillons〜
ヴァイヨンは、村名区画を挟んだモンマンの北西に位置します。ヴァイヨンは粘土が多い畑で、硬すぎないのが特徴です。滑らかで整った形をしています。ゆったりした性格です。
ヴァイヨンのグループのレ・リスは、シャブリの中でも最初期に開墾された畑ですが、1erクリュの中でも特に高貴さを感じる畑です。北向き斜面で味わいに冷涼感があり、非常に整った安定感のある酒質が特徴です。
同グループのセシェは勢いがありパッと香りが広がります。
コート・ド・レシェ(コート・ド・ルシェ)〜Côte de Léchet〜
ヴァイヨンからさらに村名区画を挟んで北西に位置するのがコート・ド・レシェです。コート・ド・レシェはシトー派の修道院がシャブリで最初に開墾した畑です。南向きの急斜面で、非常にミネラル感がありまっすぐでかっちりした性格です。香りの抜けもいいです。
ヴォー・ド・ヴェイ〜Vau de Vey〜
コート・ド・レシェから西に進みベーヌの村に入ったところに位置します。ヴォー・ド・ヴェイは重めで力強く、広がりがあります。
シャブリの代表的な造り手
- ドメーヌ・フランソワ・ラヴノー〜Domaine Francois Raveneau〜
- ヴァンサン・ドーヴィサ〜Vincent Dauvissat〜
- ドメーヌ・ダニエル・エティエンヌ・ドゥフェ〜Domaine Daniel-Etienne Defaix〜
- ドメーヌ・ベルナール・ドゥフェ〜Domaine Bernard Defaix〜
- ウィリアム・フェーブル〜 William Fèvre〜
- ドメーヌ・ラロッシュ〜Domaine Laroche〜
- エレオノール・モロー〜Eléonore Moreau〜
- ドメーヌ・ルイ・モロー〜Domaine Louis Moreau〜
- ドメーヌ・クリスチャン・モロー〜Domaine Christian Moreau〜
- ドメーヌ・ロン・デパキ〜Domaine Long Depaquit〜
- ラ・シャブリジェンヌ〜La Chablisienne〜
- ドメーヌ・ヴォコレ・エ・フィス〜Domaine Vocoret & Fils〜
- ドメーヌ・ローラン・ラヴァントゥルー〜Domaine Roland Lavantureux〜
- ジャン・マルク・ブロカール〜Jean-Marc Brocard〜
- ドメーヌ・ビヨー・シモン〜Domaine Billaud Simon〜
- ル・ドメーヌ・ダンリ〜Le Domaine d’Henri〜
- ドメーヌ・ジャン・コレ・エ・フィス〜Jean Collet & Fils〜
- ドメーヌ・ド・ランクロ〜Domaine de l’Enclos〜
- ジャン・ポール・エ・ブノワ・ドロワン〜Jean Paul & Benoit Droin〜
- ドメーヌ・ジュリアン・バイヤール〜Domaine Julien Baillard〜
- ドメーヌ・モロー・ノーデ〜Domaine Moreau Naudet〜
シャブリではありませんが、シャブリ周辺のエリアであるグラン・オーセロワのワインの紹介はこちらです。