サン・テミリオン〜Saint-Emilion〜
ボルドーの右岸エリアで最も大きく有名な産地がサン・テミリオンです。一大観光地ですね。
サン・テミリオンの街自体は大きくはありませんが、1999年に世界遺産に認定された街並みは(ワイン産地で初)、中世の雰囲気を残しています。石畳の道がいい味を出しています。
モノリス(一枚岩)の教会など有名な建造物がありますね。お菓子では、中に何も挟まない昔ながらのマカロンがあります。よく見かけるマカロンとは生地自体も違い、素朴で美味しいです。
サン・テミリオンのワイン生産地域は8つのコミューンがあります。サン・テミリオンの他、その東側に位置するサン・クリストフ・デ・バルト~Saint Christophe des Bardes〜、さらにその南側に、サン・ローラン・デ・コンブ~Saint Laurent des Combes〜、その東側にはサン・ティポリット~Saint Hipplyte〜、サン・テティエンヌ・ド・リス~Saint Etienne des Lisse〜と続きます。
これら5つのコミューンから南部に離れた場所に位置するのがサン・ペイ・ダルマン~Saint Pey D´Armens〜です。そこから南西方向に進んだドルドーニュ川沿いにはヴィニョネ~Vignonet〜があります。
サン・テミリオンの南西部のドルドーニュ川沿いにはサン・シュルピス・ド・ファレイラン~Saint Sulpice de Faleyrens〜があります。
全て把握する必要はないかもしれないですが、近年はサン・テティエンヌ・ド・リスのエリアのワインが評価されていると思います。
サン・テミリオンは8c頃、聖エミリオンが洞窟を掘って暮らし始めたのが、起源と言われていて、モノリス教会は、聖エミリオンが亡くなった後、弟子たちが偲んで造ったと言われています。
サン・テミリオンは、スペインにあるキリスト教の聖地、サンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路でもあったので、11世紀以降数多数の教会や修道院などが建てられ、発展しました。
ボルドーの歴史の中でもグラーヴと並んで、重要な都市と言えます。
サン・テミリオンの中心の丘(サンテミリオンの丘)は脆い石灰岩の土壌です。第三紀の石灰岩で、標高の高いところは下部より硬い石灰岩です。サン・テミリオンの代表と言っていいシャトー・オーゾンヌの畑は、石灰岩に粘土、砂、砂岩などが混ざるモラス・ド・フロンサデで、最良のテロワールです。
サン・テミリオンの中央部から東端にかけては、粘土質が強い土壌でもあります。東部にはサンテミリオンのもう1つの丘であるパヴィの丘があります。
この2つの丘の南側の斜面が質が高いと言われています。
逆に西側のシャトー・シュヴァル・ブランなどがあるポムロール寄りのエリアは砂や砂礫の軽めの土壌です。基本、石灰岩はありません。
シャトー・テルトル・ロートブッフはサン・テミリオン東側のエリアのワインです。後述するA.O.C.サン・テミリオン・グランクリュです(格付けではない)
格付けではないとは言え、かなり上質な味わいで並の格付けワインの上を行きます。
サン・テミリオンのぶどう品種はメルロ主体で、メルロ自体はまろやかで、華やかな上昇感や骨格のあまりない品種ですが、石灰岩による引き締まりと、標高の高さが伸びやかさを生みます(丘ではない平地のワインは平坦になります)
西側の砂礫質のエリアはカベルネ・フランに最適で、シャトーによってはセパージュの半分ほどをカベルネ・フランにしている場合もあります。
シャトー・ラ・ドミニクはポムロールに近いサン・テミリオン西端のワインです。後述するグランクリュ・クラッセ格付けです。シャトー・ラ・ドミニクに関してはカベルネフランは少なめでメルロの割合がかなり多めです。昔はカベルネフランが植えられてもいませんでしたが、今は少しづつカベルネフランを増やしているようです。
軽やかでナチュラルな味わいです。
シャトー・ダッソーはサン・テミリオン北部のワインです。軽い土壌で冷涼なエリアです。軽快で細身です。シャトー・ダッソーもサンテミリオン・グランクリュ・クラッセのワインです。
サン・テミリオンのグランクリュ
サン・テミリオンにもシャトーの格付けがありますが、他の地域とは違い10年に一度見直しがあるのが特徴です。1958年に制定されたサン・テミリオンの格付けは、
- プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA(第一特別級A)
- プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB(第一特別級B)
- グラン・クリュ・クラッセ(特別級)
の3つに分かれています。これらの格付けには選ばれていないA.O.C.サン・テミリオン・グラン・クリュ表記のワインもあります(A.O.C.サン・テミリオン・グラン・クリュのワインのみが格付けに選ばれている)
プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA(4)
- シャトー・オーゾンヌ〜Château Ausone〜(サンテミリオンの丘南部)
- シャトー・シュヴァル・ブラン〜Château Cheval Blanc〜(サンテミリオン西部、ポムロール隣接)
- シャトー・パヴィ〜Château Pavie〜(パヴィの丘)
- シャトー・アンジュリュス〜Château Angélus〜(サンテミリオンの丘北部)
プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB(14)
- シャトー・ボーセジュール〜Château Beauséjour〜(サンテミリオンの丘北部)
- シャトー・ボーセジュール・ベコ〜Château Beau-Séjour-Bécot〜(サンテミリオンの丘北部)
- シャトー・べレール・モナンジュ〜Château Bélair-Monange〜(サンテミリオンの丘南部)
- シャトー・カノン〜Château Canon〜(サンテミリオンの丘北部)
- シャトー・カノン・ラ・ガフリエール〜Château Canon La Gaffelière〜(サンテミリオンの丘南部)
- シャトー・フィジャック〜Château Figeac〜(サンテミリオン西部、ポムロール隣接)
- クロ・フルテ〜Clos Fourtet〜(サンテミリオンの丘北部)
- シャトー・ラ・ガフリエール〜Château la Gaffelière〜(サンテミリオンの丘南部)
- シャトー・ラルシ・デュカス〜Château Larcis Ducasse〜(パヴィの丘)
- ラ・モンドット〜La mondotte〜(パヴィの丘)
- シャトー・パヴィ・マッカン〜Château Pavie Macqin〜(パヴィの丘)
- シャトー・トロロン・モンド〜Château Troplong Mondot〜(パヴィの丘)
- シャトー・トロットヴィエイユ〜Château Trottevieille〜(パヴィの丘)
- シャトー・ヴァランドロー〜Château Valandraud〜(サンテミリオンの丘、パヴィの丘どちらにも畑がある)
グラン・クリュ・クラッセ(64)
- シャトー・ラロゼ〜Château l’Arrosée〜
- シャトー・バルスタール・ラ・ロ・ネル〜Château Balestard la Tonnelle〜
- シャトー・バルド・オー〜Château Barde-Haut〜
- シャトー・ベルフォンベルジェ〜Château Bellefont-Belcier〜
- シャトー・ベルヴュー〜Château Bellevue〜
- シャトー・ベルリケ〜Château Berliquet〜
- シャトー・カデ・ボン〜Château Cadet-Bon〜
- シャトー・カップ・ド・ムルラン(ムーラン)〜Château Cap de Mourlin〜
- シャトー・ル・シャトレ〜Château le Chatelet〜
- シャトー・ショーヴァン〜Château Chauvin〜
- シャトー・クロ・ド・サルプ〜Château Clos de Sarpe〜
- シャトー・ラ・クロット〜Château La Clotte〜
- シャトー・ラ・コマンドリー〜Château la Commanderie〜
- シャトー・コルバン〜Château Corbin〜
- シャトー・コート・ド・バロー〜Château Côte de baleau〜
- シャトー・ラ・クスポード〜Château La Couspaude〜
- シャトー・ダッソー〜Château Dassault〜
- シャトー・デスティーユ〜Château Destieux〜
- シャトー・ラ・ドミニク〜Château La Dominique〜
- シャトー・フォジェール〜Château Faugères〜
- シャトー・フォリ・ド・スシャール〜Château Faurie de Souchard〜
- シャトー・ド・フェラン〜Château de Ferrand〜
- シャトー・フルール・カルディナール〜Château Fleur Cardinale〜
- シャトー・ラ・フルール・モランジェ〜Château La Fleur Morange〜
- シャトー・フォン・ブロージュ〜Château Fombrauge〜
- シャトー・フォンプレガード〜Château Fonplégade〜
- シャトー・フォンロック〜Château Fonroque〜
- シャトー・フラン・メーヌ〜Château Franc Mayne〜
- シャトー・グラン・コルバン〜Château Grand Corbin〜
- シャトー・グラン・コルバン・デスパーニュ〜Château Grand Corbin-Despagne〜
- シャトー・グラン・メーヌ〜Château Grand Mayne〜
- シャトー・レ・グランド・ミュレイユ〜Château les Grandes Murailles〜
- シャトー・グラン・ポンテ〜Château Grand-Pontet〜
- シャトー・グァデ〜Château Guadet〜
- シャトー・オー・サルプ〜Château Haut-Sarpe〜
- クロ・デ・ジャコバン〜Clos des Jacobins〜
- クーヴァン・デ・ジャコバン〜Couvent des Jacobins〜
- シャトー・ジャン・フォール〜Château Jean Faure〜
- シャトー・ラニオット〜Château Laniote〜
- シャトー・ラルマンド〜Château Larmande〜
- シャトー・ラロック〜Château Laroque〜
- シャトー・ラローズ〜Château Laroze〜
- シャトー・マドレーヌ〜Château Madeleine〜
- シャトー・ラ・マルゼル〜Château la Marzelle〜
- シャトー・モンブスケ〜Château Monbousquet〜
- シャトー・ムーラン・デュ・カデ〜Château Moulin du Cadet〜
- クロ・ド・ロラトワール〜Clos de l’Oratoire〜
- シャトー・パヴィ・ディセス〜Château Pavie Decesse〜
- シャトー・ペビ・フォジェール〜Château Peby Faugères〜
- シャトー・プティ・フォーリー・ド・スタール〜Château Petit Faurie de Soutard〜
- シャトー・ド・プレサック〜Château de Pressac〜
- シャトー・ル・プリュレ〜Château le Priuré〜
- シャトー・キノー・ランクロ〜Château Quinault l’Enclos〜
- シャトー・リポ〜Château Ripeau〜
- シャトー・ロシュベル〜Château Rochebelle〜
- シャトー・サン・ジョルジュ・コート・パヴィ〜Château Saint-Gerorges-Cote-Pavie〜
- クロ・サン・マルタン〜Clos Saint-Martin〜
- シャトー・サンソネ〜Château Sansonnet〜
- シャトー・ラ・セール〜Château La Serre〜
- シャトー・スータール〜Château Soutard〜
- シャトー・テルトル・ドーゲ〜Château Tertre Daugay〜
- シャトー・ラ・トゥール・フィジャック〜Château La Tour Figeac〜
- シャトー・ヴィルモリンヌ〜Château Villemaurine〜
- シャトー・ヨン・フィジャック〜Château Yon-Figeac〜
1958年当初は、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAが2シャトー、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセBが10シャトー、グラン・クリュ・クラッセ63シャトーで、1969年に初めて見直しがおこなわれ、その後1986年、1996年、2006年と10年ごとに見直しが行われています。
2006年の改定では、降格したシャトーが裁判を起こし、一時的に1996年の格付けに戻され、昇格したシャトーはそのままという暫定的な措置が取られました。
2012年に正式に格付けが発表されています。格付け当初から、プルミエ・グランクリュ・クラッセAはシャトー・オーゾンヌとシャトー・シュヴァル・ブランの2つでしたが、2012年の改定では、シャトー・パヴィとシャトー・アンジュリュスが、プルミエ・グランクリュ・クラッセAに昇格しました。とはいえ、パヴィもアンジュリュスもオーゾンヌやシュヴァル・ブランには届かないように思います。
2012年にもう1つ話題になったワインがシャトー・ヴァランドローです。格付けに選ばれていなかったシャトー・ヴァランドローはグランクリュ・クラッセと飛び越えてグランクリュ・クラッセBに飛び級しました。それにより一気に人気は高まりサンテミリオンを代表するシンデレラワインの1つとなっています。
紹介しているのは丁度格付けが上がった2012年ヴィンテージですが、クオリティとしては近年のものの方が随分と高いように思います。
プルミエ・グラン・クリュ・クラッセBの中でシャトー・ベレール・モナンジェとシャトー・カノンはむしろシャトー・アンジュリュスより良いように思います。シャトー・ベレール・モナンジェは以前はシャトー・ベレールという名前でしたが、2008年から名称が変わっています(現在はムエックス社所有)シャトー・オーゾンヌの隣で良いテロワールです。まっすぐ芯のある伸びやかさ。ベレール時代のエチケットの方が好きです。
グラン・クリュ・クラッセの中ではシャトー・ベルヴューがとても良いです。シャトー・アンジュリュスやシャトー・ボーセジュール・ベコに隣接しています。繊細で華やかな味わい。
サン・テミリオン衛生地区
AOCサン・テミリオンの北側、バルバンヌ川を挟んだ場所にサン・テミリオン衛星地区と呼ばれる4つのアペラシオンがあります。
- サン・ジョルジュ・サン・テミリオン〜Saint-Georges Saint-Emilion〜
- モンターニュ・サン・テミリオン〜Montagne Saint-Emilion〜
- リュサック・サン・テミリオン〜Lussac Saint-Emilion〜
- ピュイスガン・サン・テミリオン〜Puisseguin Saint-Emilion〜
以前は、パルサック・サンテミリオン~Parsac Saint-Emilion〜と、サーブル・サン・テミリオン~Sable Saint-Emilion〜というアペラシオンもありましたが、現在は消滅しています。
全体的に引き締まってさらっと抜けの良い味わいです。標高高めの粘土石灰質が基本。比べるとサン・ジョルジュ・サンテミリオンは肉厚な印象です。紹介しているピュイスガン・サンテミリオンのシャトー・ボーセジュール・サン・シュルフュテは2017年に関してはカベルネフラン100%でSO2無添加の特殊なタイプではありますが(ヴィンテージによってセパージュが違う)、美味しいです(少しだけやりすぎな気はしますが)
ボルドーのワイン産地④、ポムロールの記事はこちらからどうぞ。