ボージョレ(ボジョレ)〜Beaujolais〜
新酒のボージョレ・ヌーヴォーでお馴染みのワイン産地、ボージョレ。マコネの南に広がるエリアで、ブルゴーニュではありますが、ぶどう品種はピノノワールではなく、ガメイから造られるボージョレは、独立した産地のように見られています。
数十年前に大きなボージョレ・ヌーヴォーのブームがあり、質の低いワインが多く出回ったこともあり、現在はワイン通の人たちには嫌煙されがちな産地なってしまっています(ボージョレというだけで、いらないと言われてしまうような)
イメージの若干よくないボージョレですが、もちろん悪い産地ではありません(ヴァン・ナチュールの造り手は多く、ナチュール好きの人にとっては、逆に聖地のような印象も受けますが)
ガメイの魅力はこじんまりとして、チャーミングでフルーティなところです。親近感のある味わいが大事な部分で、コート・ドール共通のワインの上下階層とは違った尺度です。酸やタンニンは少ないですが、粗めのタンニンです。フルーティなワインが多いので気付きにくいですが、ワイルドな部分を秘めている品種でもあります。
ボージョレは基本的に全房発酵で、特にヌーヴォーはマセラシオン・カルボニックやセミ・マセラシオン・カルボニックでフレッシュな味わいのワインを造ります。
ボージョレには96の村があり、かなり広い産地です。
全体的に標高が高く、平均でも300m(500mを超える畑も4割ほどある)とフランスでも屈指の山岳地帯となっています。
ボージョレの名前はかつての中心地、ボージュ(ボジュー)から来ています。
ボージョレとボージョレ・ヴィラージュ〜Beaujolais & Beaujolais Villages〜
ボージョレ地方は大きく南北に分けることが出来ます。
ボージョレ地方南部に広がるアペラシオンがボージョレです。粘土石灰土壌で(石灰は少なく柔らかい)、上記のような個性がもっとも発揮されているのがA.O.C.ボージョレと言えます。
ボージョレのアペラシオンの中でもヴィルフランシュ・アン・ボジョレーの街の南部はピエール・ドレと呼ばれています。ピエール・ドレではガメイだけではなくピノノワールも栽培されていて、ルイ・ラトゥールが、コート・ドールとはまた違った魅力あるピノノワールのワインも造っています(他の造り手も増えていくと思います)
ピエール・ドレのエリアは粘土石灰岩ですが、ジュラ紀ではなく、より古い三畳紀です。気候と土壌が相まって、温かでいて少し陰りのあるピノノワールです。
ただボージョレのアペラシオンは赤ワインはガメイではないと名乗れないので、ルイ・ラトゥールのピエール・ドレのアペラシオンは、コトー・ブルギニヨンです。
北部にはボージョレ・ヴィラージュのアペラシオンが広がっています(北部にもボージョレのエリアは少しありますが、南部にボージョレ・ヴィラージュはありません)
北部は南部より標高が高く、土壌は花崗岩の砂が主体です。さらっとまっすぐ品良く抜けていくワインです。
ボージョレもボージョレ・ヴィラージュも多くはガメイの赤ワインですが、ロゼワインや白ワインも認められています(白ワインはシャルドネ)
ガメイは花崗岩との相性が良いと言われ、ヴィラージュの方が上のアペラシオンということになりますが、実際は土壌と標高の違いから、全く違った個性のワインが生まれています。必要に応じてボージョレとボージョレ・ヴィラージュを使い分けることが大切です。
ドメーヌ・シャサーニュのボージョレ・ヴィラージュは、ヴィラージュの中でも特に評価の高いランティニエ村の畑、レ・ブリュイエールのぶどうを使用したワインです。
クリュ・デュ・ボージョレ〜Crus du Beaujolais〜
ボージョレ地方北部の中でも10の村はクリュ・デュ・ボージョレのアペラシオンが名乗れ、特にクオリティの高いワインを生み出すクリュとして村名を表記することができます(正確には10の村ではなく、22の村が10あるクリュ・ボージョレを名乗れる)クリュ・ボージョレを名乗れるのは赤ワインのみです。
クリュ・デュ・ボージョレは北部ですので基本的に花崗岩の土壌が多いですが、他にも石灰岩だったりシストもあり、かなり多様なスタイルです。どのクリュにしろ、さすがクリュ・デュ・ボージョレに選ばれていることだけあり、ガメイの魅力がしっかりと感じられる上質なワインが多いです。
日本ではクリュ・デュ・ボージョレはあまり見かけず、あってもヴァン・ナチュールのタイプのものが多いですが、あまりナチュールに寄りすぎてないワインを選べば、非常に個性が分かりやすく使いやすいです(ただ一見分かりにくい派手さのないワインばかりです。分かってくるととても良い。ボージョレ全般に言えることですが)
サン・タムール〜Saint-amour〜
クリュ・ボージョレの中で最北に位置するのがサン・タムールです。アムールは愛の意味。ボージョレの全体でも最北と言ってよく(もう少し北の畑もあるが)、マコンに隣接しています(マコンの一部でもあります)サン・タムールで白ワインを造るとサン・ヴェランを名乗ることが出来ます。
クリュ・デュ・ボージョレの中でも小さなクリュです。標高は300m前後で緩やかな斜面です。
サン・タムールだけ、他のクリュボージョレとまるっきり違う方向で、石灰の味が強くキリッとしています。
ジュリエナ(ジュリエナス)〜Julienas〜
サン・タムールより標高が高く、急斜面なのがジュリエナ(ジュリエナス)です。クリュ・デュ・ボージョレの中でも古くからワインが造られていた村で、村の名前はジュリアス・シーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル)が由来と言われています。
斜面部分はシストです。
ジュリエナは、ガッチリ硬めですが、標高が高いので重苦しくないのが魅力です。
シェナ(シェナス)〜Chenas〜
最も小さなクリュ・ボージョレのシェナ(シェナス)一部はムーラン・ア・ヴァンを名乗れます。樫の木を意味するシェーヌ〜 Chenes〜から名前が付いています(昔は樫の森だった)
シェナもかっちりと硬い印象です。シェナの村の西側は花崗岩の急斜面です。そのままムーラン・ア・ヴァンに続きます。シェナの東側に位置するラ・シャペル・ド・ギンシェの周辺は緩やかな斜面です。
シェナはかっちりしてあまりボリュームはありませんが、引き締まった硬質感が魅力です。
ムーラン・ア・ヴァン(ムーラン・ナ・ヴァン)〜Moulin a Vent〜
ムーラン・ア・ヴァン(ムーラン・ナ・ヴァン)は風車の意味です。シェナス村とロマンシュ・トラン村にまたがって広がるクリュで、ロマンシュ・トラン村にある風車から命名されました。
ムーラン・ア・ヴァンは、クリュ・ボージョレの中でもボディのしっかりしたワインです。
フルーリー〜Fleurie〜
少し赤っぽい色をした花崗岩の土壌をもっているのがフルーリー。
女性的で品がありつつも可愛らしい印象を受けるワインです。非常にしなやか。加えて高密度で芯があるのがフルーリーです。
シルーブル〜Chiroubles〜
クリュ・ボージョレの中でももっとも標高が高く急斜面です。標高750m程の畑もあります。桃色の花崗岩。
さらっと軽やかなのがシルーブルです。タンニンを感じません。砂質の土壌で最も柔らかい質感。
ジュール・メトラはナチュール寄りではありますが良い出来です。父親のドメーヌのイヴォン・メトラも非常にエネルギー感のあるワインですね。
モルゴン〜Morgon〜
モルゴンは、北部と南部で土壌が違い、北側の方が質がいいと言われています。中でも中央部に位置するコート・ド・ピィ〜Cote de Py〜の丘で造られるワインが最上級と言われています。他にもレ・シャルムやコルスレットと言った畑が知られています。
丘の上のワイン以外は割と標高低めです。様々な土壌があり結構味わいにバラツキがありますが、基本は火山岩です。レ・シャルムにはシストもあります。東側は泥灰岩です。
レニエ〜Regnie〜
1988年にボージョレ・ヴィラージュから格上げされた最も新しいクリュ・デュ・ボージョレがレニエです。クリュになったのは遅いとはいえ、ワイン造りの歴史は長く古代ローマ時代から続いていると言われています。
クリュ・ボージョレの中では標高が低めで、どしんと地に足ついたワインです。
ブルイィ〜Brouilly〜
クリュ・ボージョレの中で最も南に位置するのがブルイィです。ぶどうの栽培面積ももっとも広いクリュです。ブルイィは村の名前ではなく、ブルイィ山から付いた名前です。ブルイィ山の周辺の6つの村からブルイィは造られています。片岩と花崗岩、そして石灰岩なども見られます。
ブルイィも比較的標高が低めです。芯はあるが柔らかめの質感です(レニエの方がはっきりした味)
コート・ド・ブルイィ〜Cote de Brouilly〜
ブルイィの中心にあるブルイィ山の周りの斜面にある4つの村は独立したクリュ、コート・ド・ブルイィを名乗れます。コート・ド・ブルイィはかなり標高が高いです。
コート・ド・ブルイィは硬い質感ですがしなやかさがあります。水分をあまり感じさせない味です。
ボージョレ・ヌーヴォー〜Beaujolais Nouveau〜、ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー〜Beaujolais Villages Nouveau〜
ボージョレの中でも一番知名度が高く、一番消費されているのがボージョレ・ヌーヴォーです。毎年11月の第3木曜日に解禁されるその年の新酒のワインで、ブームは去ったとはいえ、ボージョレのワインが一番売れる日なのは変わらないようです。
ヌーヴォーやプリムール(同じような意味)のワインはボージョレ以外でも各地にありますが、圧倒的にボージョレ・ヌーヴォーの知名度が高く、一般の方にはヌーヴォー=ボージョレのような感じになっています。
ボージョレ・ヌーヴォーをここまで広めたのはボージョレの帝王と呼ばれるジョルジュ・デュブッフの功績によるものです。コンビニでもヌーヴォーの時期になるとよく見かけますね。サーモヴィニフィカシオンという発酵初期に加温する醸造法でワインを造っています。デュブッフのワイン好き嫌いは別にしてヌーヴォーの完成度はなんだかんだ高い気はします(ボージョレの基本の味)
ボージョレ・ヌーヴォーは毎年ネタにされる大げさなキャッチフレーズは、逆にイメージを悪くする要因のように思いますが、それは置いておいて、より軽やかに造られたワインは、非常にチャーミングで、楽しい雰囲気があります。
その年で最初に飲めるフランスワインということもあり、ヴィンテージの個性を知ることが出来ることが何よりの魅力です。そして空輸で来ることによる状態の良さと、造られてすぐ飲めるという鮮度感も魅力です。
ヌーヴォーにも、ボージョレ・ヌーヴォーとボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォーがあり、特徴は、ボージョレとボージョレ・ヴィラージュの違いそのままです。
またボージョレ(ヴィラージュ)・ヌーヴォーの良い年は数年寝かせても美味しいです(ヴィラージュは寝かせた方がいいくらい)
ヴィラージュ・ヌーヴォーの方が値段が高いことが多いですが、ヴィラージュの方が美味しいということはなく、違った個性です。特に寒いヴィンテージのヴィラージュ・ヌーヴォーは早摘みしないといけないので青さを感じることが多いです(ヌーヴォーではなければしっかり熟してから収穫できる)そのため寒いヴィンテージは普通のボージョレ・ヌーヴォーの方がボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォーより美味しいです。
ボージョレの代表的な造り手
ボージョレ・ヌーヴォーの知名度の高さから、たくさんの造り手のワインが流通しています。ナチュールの作り手も非常に多いので、そういった造り手も含めて代表的な造り手、味わいが好ましい造り手を紹介します。ヌーヴォーしか飲んだことがない方も多いとは思いますが、他のワインも試してみるとまた違った魅力に気付けるはずです。
- シャトー・カンボン〜Chateau Cambon〜
- クリストフ・パカレ〜Christophe Pacalet〜
- イヴォン・メトラ〜Yvon Metras〜
- ジュール・メトラ〜Jules Métras〜
- ミシェル・シニャール〜Michel Chignard〜
- ジャン・マルク・ラフォレ〜Jean Marc Laforest〜
- ドメーヌ・ピロン〜Dominique Piron〜
- ロシェット〜Rochette〜
- ドメーヌ・ローラン・ペラション〜Domaine Laurent Perrachon〜
- ギィ・ブルトン〜Guy Breton〜
- カリーム・ヴィオネ〜Karim Vionnet〜